129-なんだこれ
「~~っていう大見せ場なのに、あたしを待たずしてやるとか
『「!?!?!?」』
いきなりの罵声に俺とエレナが慌てて飛び退き、声の主へと目線を向けると……暗黒竜すらドン引きするほどに怒り狂った
「おにーちゃん、めーーーーーっ!!! あと、エレナさんも、めーーーーーっ!!!」
『えええっ、私もですかっ!?』
とばっちりで怒られて目を白黒させているエレナを
そして、俺をビシッと指差すとニヤリと怪しげに笑った。
「ま、エレナさんが抱きついて『エレナさん? じゃないですーーー!』って叫んだタイミングに間に合ったから良かったけどさ~」
「一部始終バッチリ見てんじゃねーかッ!!! ……っていうか、さすがに帰ってくるの早すぎじゃね?」
サツキが「ユピテルの許嫁と話をつけてくる」とか言ってパーティから離脱したのは二日前のこと。
フルルの空間転移スキルを使って聖王都へ飛んだとしても、そこからエルフの村まで大急ぎで向かっても数時間はかかるので、仮に当日夕方前にエルフの村に到着できたとしても、その翌日夜にココへ戻ってきたとなると、ほぼ一日で解決したというコトになってしまうのだが。
『……うん、凄かったよ。色々と』
「なんかいつもゴメンな……」
ユピテルの引きつった表情から、詳細を聞かずともサツキが相当暴れたことは察した。
「とりあえずユピテルの一件はパパーッと終わらせたんだけどね。一晩泊まって行こうかと思ってたトコに、フルルが『ラブコメ展開の……予感。風が……くる!』とか言い出してさ。大慌てで戻ってきたら、まさかのビンゴだよ」
『ふふふ……僕の勘は世界一ぃ……』
「意味わかんねえ」
相変わらず謎過ぎるフルルの言動に俺が呆れていると、ハルルがサツキのフードからぽんっと顔を出し、スノウの前へとやって来た。
『スノウも久しぶりっす』
『お久しぶりですハルル様』
「へ?」
何故か、スノウとノワイルともにハルルを前にして頭を下げている。
というか、アネゴ言葉だったはずのスノウが敬語!?
「お前ら面識あったのか? それに、ハルル……様???」
俺の問いに対し、スノウは苦笑しつつも驚きの事実を口にした。
『立場的に、ハルル様はあたしのご主人様っていうか、そんな感じの関係なのよねぇ』
「ご主人様ぁ!?」
素っ頓狂な声を上げて驚いていると、今度はフルルがフワフワとやって来てノワイルを指差した。
『ちなみに……ノワイルを召喚したのは……僕』
『グルルゥ……』
「意味わかんねえ」
どんどん話が内輪に収束してゆく……。
いや、収束しても意味不明という事実は変わらないんだけども。
隣にいるエレナもサッパリ理解できないらしく、困惑するばかりだ。
『そんじゃ、ちょいと私が歴史のお勉強をさせてもらうっすよ!』
……
…
かつてフロスト王国が魔王の呪いによって、極寒の大地となってしまった際、神殿の巫女であった双子妖精のハルルとフルルのもとへ王国の使者がやって来た。
「魔王の呪いによって凍えた大地では、我らは満足に力を発揮できませぬ。巫女様、どうか我らにお力を……!」
『その願い……叶えてしんぜよう……えっへん』
そしてハルルとフルルは、魔王軍による侵攻から人々を守るため、とある儀式を執り行うこととなった。
――神竜召喚。
フロスト北の神殿には異世界と繋がるゲートがあり、世界が危機に陥った際に従順なる
どうして知っていたのかは知らないけども、知っているのだから仕方が無い、らしい。
何はともあれ、国王や重鎮達が固唾を
『出でよ、ホワイトドラゴン!』
ハルルの呼びかけによって現れたホワイトドラゴン――白竜スノウの巨大な姿を見て、人々は恐怖に震え上がった。
しかし、頭を垂れてハルルへ忠誠を誓うスノウの姿を見て、皆は安堵の溜め息を吐き、この地が救われると喜んだ。
神より賜りし竜の力で、この大地はきっと平和になるだろう――!
「なんて素晴らしいことでしょう!」
それを見て喜んだ時の王女が『
その姿はとても美しく、まるで船乗りの心を惑わすセイレーンのごとく素晴らしいものであった。
……が、フルルがその姿を見てなにやら思うことがあったらしい。
『歌じょうず……イラッ』
そんな雑念が災いとなって、フルルの召喚術は見事に大失敗!
神竜ではなく暗黒竜が召喚されてしまったうえ、フルルの憤怒の感情が影響したためか、いきなり暴れ始めてしまった。
それまで歓喜に沸いていた者達が泣き叫び逃げ惑う地獄絵図に、姫様もショックで昏倒。
被害者こそ出なかったものの、暗黒竜の襲撃で城が壊されたり街一番の歴史的な建物がファイアブレスで消し炭になってしまうなど、国中が大パニックに……。
結局、暗黒竜ノワイルは神竜スノウによって倒されたものの、国防の要となるはずだったスノウ自身も力尽き、海に流されてしまった。
そして、この王国史に残る珍事……もとい大事件が原因となって、ハルルとフルルの両名はカナタ達がやってくるまで、償いのためフロスト王国の地を護り続けることとなったのであった……。
…
……
「なんだこれ」
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