第5話 TRPG(ろーぷれ)日記 番外7-2 より 『月、ソリッドワールド』
∞月∞日 番外 世界創造??日め、その2-2 -
2-1のつづき
「こちらの護衛はいらない。護法と式紙で十分だ。」
「「了解!!」」
狐、座敷わらしが同時に答える。
狐、先行する。
歩きながら、猫又のように光の粒を纏い鎧と武器を身につける。
メイド服の上から身につけた鎧の金属板は、猫又のものより厚く大きい。
重装タイプ。猫又の回避を主とした軽装タイプと違い、受け流す、あるいは弾くことを目的としていると思われる。
背負っている大剣は、刃渡りが狐の身長ほど。
柄も長く、肩口からそそり立つように飛び出している。
巨人を切り裂くには現実的な大きさだが、そもそも振り回せるのか?
それと、彼女の周囲に浮かぶいくつかの御札のようなもの。
あれはなんだ?
おそらく防御のためのものだと思うが…。
視界の上側から現れる座敷わらし。
どこから現れたんだ?俺を飛び越したのか!?
やめなさい!!はしたない。
女の子がスカートで!!
今度会ったら言ってやらないと。って夢か?
視界、座敷わらしや狐と一緒に、自分…らしき男をすり抜けて、彼女たちを追いかけるように移動を始める。
「きーちゃん、デバフかける?
バフ?」と座敷わらし。
「バフお願い。デバフは効きづらそう。
種類はまかせる。」
稲荷狐は巨人を見すえたまま答えた。
巨人の触手が光り、何か放たれる。
弧を描きながら、幾つかがこちらに向かってくる。
かなり速い、誘導型の射撃か?
狐に向かっていったものは、
当たるかと思った瞬間、狐をすり抜けて後ろの地面を抉る。
狐の傍らに浮かんでいたもののうちの一つが燃え上がり消えた。
身代わりの護符のようなものか?
座敷わらしに向かっていった方は何かが飛来して受け止めた。
止まるが、力が拮抗しているみたいだ。
巨人の攻撃は、なんとかして座敷わらしに向かおうと、受け止めたものの前で激しく震える。
あ、こちらにも向かってきた。
たぶんすり抜けるだろうと頭ではわかっているが、身体は反射的にかわそうとする。
身体、あるか判らないけどね(笑)
まあでも動かないよな、やっぱり。
ヤバ!!あ、受け止めた。?これ、座敷わらしのと同じものか?
直ぐ目の前で大ぶりのコインのようなものが、20センチほどの半透明な球体を受け止めている。
剣士が鍔迫り合いで力押ししあうように、お互いが小刻みに震えながら、さながら振り子のように左右にゆっくり振れる。
コインに押され、球体が少し歪んだ。
これ、柔らかい?というか実体か!!
いまさらだが、球体が狐をすり抜けたあと、地面を抉っていたことに思考が追いつく。
半透明な内側、中で何かがぐねっと蠢く。
生きてる!?これ、卵だ!!
全身に鳥肌が立った。
あの巨人、増えるのか!?
球体の殻を破り、中身が素早く躍り出てコインを避けかわそうと試みる。
が、コインはその行動に素早く対応。
鈴を鳴らすような金属音と共にコインが分割、変化してカニのような姿になり、
生まれたイモムシのような半透明のものを押さえ込む。
イモムシは逃れようと暴れるが、掴まれたカニのハサミはそれを決して離そうとはしない。
その攻防はしばらく続いたが、やがて両者はもつれ合いながら自分の視界から消えた。
狐と座敷わらし!!
それに猫又は!?
目の前の攻防、カニとイモムシが居なくなったおかげで周りが見えた。
狐は巨人の近くにいる。斬りつけるために接近したのか、牽制か。
座敷わらしはそれより後ろ。腕が届かない範囲から、狐と猫又に支援魔法?何かの援助する効果をかけているように見える。
時折、座敷わらしの手元から揺らめく光が仲間へと向かってゆく。
猫又は、巨人の周りを飛び回っている。
何だろう?何をしているのか判らない。
ああ、巨人の卵、仔を潰して回っているのか…。
今、打ち出されたばかりの射撃痕に向かっている。
そして巨人から狐に向けての射撃。
同時に、巨人の腕が狐に襲いかかる。
稲荷狐は振り上げ打ち下ろされた巨人の腕を抜きはなった大剣で受ける。
ぎゃりぎゃりと嫌な音が響く。
大剣、いや、片刃だから斬馬刀?長巻か?
武器で受けつつ、狐は傍らの御札らしいものを業火に変え打ち出す。
巨人がひるみ、その隙に後退。
あの御札は攻防一体か…。
「きーちゃん!!
うかつに近づくの危ないです。」
座敷わらしがさけぶ。
「わかってる!!
猫又ちゃん遊んでないで触手もうちょっと落として!!」
武器を構えながら声をかける。
「了解!!
うちのリーダーは人使いが荒い(笑)」
猫又、素早く指示に取りかかるけれども、表情はのん気この上ない。
ああ、いつもの猫又だ(苦笑)
その余裕めいた様子が狐を苛立たせる。
これもいつも通り(笑)
「何言ってんの!!
あんたがこちらの指示通りに動かないからでしょ!!」
「腕落とした方が早いよね(笑)」
「相手の目を奪えって言ったのよ!!
連携とれないじゃない。」
「ちょっと二人ともっ!!
けんか止めてください!!」
「「ケンカじゃない」(わよ)!!」
「「打ち合わせ」(よ)!!」
「…そうですか」
座敷わらしのため息。
息ぴったりだな(苦笑)
「射撃行くから、猫又注意して回避」
抑揚のない俺の声が聞こえる。自分じゃない、あいつだ。
「こうだん。
つらぬけ」
「マスターだめっ!!天井に当たる!!」
狐の叫び。
「だいじょうぶ。止まる」
小さなつぶやき。
狐には届いたかどうか。
下から斜め上へ向け伸びていった光の帯は、巨人の胸をつらぬいて残った腕を千切りとばす。
後方のビルを突き抜けて空へと向かうと思われた光は、
ビルのほんの少し手前で断ち切られるようにして消えてゆく。
巨人は前のめりに倒れてゆく、先ほどの光は腕だけでなく、ほかにもダメージを与えたようだ。
首の辺りがほとんど千切れかけ、頭が傾いてしまっている。あれが致命傷だったのだろう。
三人が自分の視界へと集まって来る。
「○○、失敗はもうしないってさ(笑)」猫又が笑う。
「○○くん…、勘弁してよ。寿命ちぢむよ。
打ち合わせとまた違うし」
狐のため息に座敷わらしもうなずき返している。
巨人が倒れた時の衝撃は無い。
物理的存在でないせいか?
解決した?
いや、
巨人の身体が内側から複数箇所、不自然に大きく盛り上がる。
中から何か出てくるのか?
「マスター生まれます。複数体に分裂!!」
狐の声に答える俺(あいつ)。
「式による結界作成準備完了。起動する。
…安定。」
「大丈夫、やっと時空列から切り離した。
もう籠の鳥だ。
焼き尽くすよ。下がって」
ハリウッドのアレ、胸から飛び出してくる異星生命体みたいに、
巨人のからだの盛り上がった箇所が弾けて、ふた周りほど小さな巨人の仔が複数体飛び出し、素早く周囲へと散って行こうとする。
けれども、あいつが言っていた結界?に阻まれているのか、巨人(親?)から一定距離以上、離れられないようだ。
そして、自分の視界にあいつが入ってくるのと入れ替わりに彼女たち三人が退く。
利き腕を差し出し巨人を狙い打つポーズ。
うわっ、端から見ても恥ずかしいのに、
やっているのが自分だと思うと耐え難い!!
やめて〜!!いっそ殺して〜!!
殺してくれないなら、俺があいつを殺すっ!!
…願いは聞き届けられなかった(泣)
「りゅうせい」
あいつがつぶやいた。
先ほどの光の帯と同じものか?
結界の内側へ天空から無数に、それこそ地形を跡形もなく消し去るように降り続き、
結界内のすべてを消し去った。
残ったのは光の弾幕が作った大穴だけ。
そしてあいつが、
ぱんっと手を叩くと結界が消え、あとは元通り。
巨人も穴も、闘いの痕跡も残っていない。
「はい!完了(笑)」
いい笑顔。くっ、殺してやりたい!!
普段の俺、こんななのかな(泣)
「○○くん…。やりすぎ。」
「○○さんはええカッコし〜だから(笑)」
「中二病な○○おつ(笑)」
三人に構われる
くっ耐え難い!!夢なら覚めろ!!
不意に振り返って、なにかを聞きつけたような素振りを見せる稲荷狐。
「マスター、電脳界から緊急通信。ドク(あらほし)からです。
敵からの転移の兆候あり。
「今回の侵攻は電脳界が中心となるようです。
先ほど殲滅した対象は陽動と思われます。」
気を取り直した
「了解した。
シフト用のゲートを開く。」
……暗転。
目が覚める。
「知ってる天井だ…。
良かった〜。」
これってホントのはなし?
あれって平行世界?
俺あんなことできないよ!!
夢?現実?
胡蝶の夢じゃね〜だろな(汗)
俺はあんな世界イヤだぞ。静かにTRPGがしたい。
でもあの世界、なんかシナリオのネタに使えないかな(笑)
稲荷狐にでも相談してみるか。
あいつ、新しいTRPGやりたがっていたから、近未来ものの妖魔討伐TRPGのマスターでも勧めてみるか…。
狐なら、手をつなげば頭の映像を見せられるしな。
…後日、みんなとの食事会で、
狐が上映しやがって、皆に大笑いされた(怒)
反省、頭の中なんて見せるもんじゃない。
-あとがきのようなもの-
このお話はアクションシーンの練習を兼ねたお話でした。
掲載はしてみましたが、なんかすごい直したい!!(>_<)
本文は単純に転載のつもりだったんですね。
でも、いざ掲載してみると、不備さ出来の悪さが目につきますね(苦笑)
うーっ直したい!!
現実のソリッドワールドは電子生命体の世界なので、実体を伴う戦闘などはほとんど発生しないのですが、これは稀有な例外ということで(笑)
お話の最後に出てくるドク、彼は蒼空の日記にも出ていた人物と同一です。
彼らは電脳神、あるいは電子生命体と呼ばれるもので、元はAIなどのプログラムであったり、ネットワークに適応したあやかしであったり、ネットワークに精神をダウンロードして肉体を捨てた人間だったりするものです。
ろーぷれ、らのべ日記の頃、あの時代には少数の存在でしたが、
きつねのきょんの世界、時代では数が完全に逆転しており、肉体を持つ人類の方がごく少数ですね。
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