第16話 謎が謎へ
そして、翌日になり、昼過ぎに、同僚の作部刑事から、今回の
極秘捜査のメンバーから、江草刑事は、はずされたと通知を受け
た。どうも、作部刑事曰く、捜査四課の主力メンバーで今後動く
らしく、何で私に回ってきたのかと疑問にも思い、本人も気色悪
く辞退したく考え直し気味だった。
そうこうしているうちに、勤務時間も夕方になり江草刑事は、ある窃盗事件の犯人とある知人の面会立会いを終え、警視庁へ戻って捜査一課に入ると、作部刑事が、ある女性と面談していた。それを横目に江草刑事は、席についてため息をついた。そ
して、さあ、次だとつぶやいた。
実は先日、昼過ぎに警視庁捜査一課の江草刑事に、一本の電
話がきた。以前、江草刑事が、大学時代から親しくしていた大
手出版会社勤務の春央 貢より高校の同級生だった堀上 恒武
と連絡とれなくなって1カ月が経ってとのことだった。
早速、江草刑事は、磯崎課長に、その旨を伝え、翌日に喫茶
店で会うことになった。
朝早くから出勤前に会いたいということで、モーニングサー
ビスをしている十和汐駅前喫茶店で、春央氏と江草刑事は、
久しぶりに会った。春央氏曰く、行方不明の堀上氏とは、大学
卒業後も、毎月1度は週末に東京駅周辺で、飲みに行っていた
仲だったらしく、ここ1カ月ほど連絡が、取れなくなって都内
のマンションに1人住まいだが、管理人にも問い合わせると、
ここ1カ月近く姿を見ないということだった。そこで、不審に
思い、大学の同級生で、警視庁の江草刑事に相談したくとのこ
とだった。2人は、30分ほど喫茶店で話していたが、もう勤
務の時間が近いということで、春央氏は、会社に向かい、江草
刑事は、また連絡すると伝えた。
警視庁に着くやいなや、堀上 恒武についての、基本身元情
報を確信すべく警視庁より出張の役所職員に連絡し、メールを
送信した。2時間ほどして、連絡があり高校は、東京都内の廼
花高校であり、大学は、都内の明坂大学であったらしく、勤務
先は、準大手音楽環境検査会社だったとのことだった。
連絡があり、江草刑事は、さっそく情報整理に取り掛かった。
勤務先と思われる音楽環境検査会社のラベンターは、アメリカの
外資系かなと当初思ったが、どうやらの南米の出資会社であることが、分かった。一瞬、机上でパソコン処理中に、異業界の要
注意の通達を思い出し、ひょっとすると(要注意潮目企業?)
と勘が冴え、企業の名前と洗い出しを捜査三課へ依頼した。
そして、捜査三課からの返答に、江草刑事は、やはりそうかと
ひと安心した。何に安心したかというと、当時企業の資金繰
りが芳しくなかったら外資系の資金に依存しつつ何かと協賛
していると噂を聞いていたからである。そして、明日からこ
の人物の足跡を追いかけてみようと、出身地の都内水戸区役
所へ伺おうと考え、他に出身高校と出身大学へも立ち寄ろう
と決心し、今日のうちに未決済の書類整理に取り掛かった。
翌日、都内水戸区役所へ彼の出生と住家について調査の協
力に願い出た。すると、1時間ほどして、総務課の杉民課長
が、何枚か基本情報を閲覧させていただいた。
受け取った写しによると、彼は、中国に幼い頃、年離れた
姉夫婦と住み、中国の日本人小学校に通学して、高校から
帰国子女で、日本に帰っていた。両親は、仕事の都合で、
外国に移住していて、姉と共に長年全く音信もとっていな
いらしい。この情報に、江草刑事は、これは、考えられな
い構成だなと驚いていた。
これからの彼の調査は、困難だなとも感じていた。
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