オネエな勇者でなにが悪い!

@Kakumitarasi

プロローグ

「暑い…」

ベッドの上で寝返りを打ちながら、羽山凛は呟いた。

大学2年になってからというもの、新入生の部活勧誘から歓迎会の準備などが重なり、目がまわりそうな忙しさが続いていた。それに加えて、必修科目の単位――出席のチェックが厳しいやつだ――を1つ落としてしまったので、朝一から夜遅くまでの授業に出席するはめになっている。

そんな肉体の疲弊に追い打ちをかけているのが、この暑さだ。5月初旬だというのに、真夏のような気温になっていると連日のようにTVで報道されている。帰ってきてシャワーは浴びたものの、またすぐにシャツが肌に張り付いていた。

エアコンをつけようと、ベッドの枕元にあるリモコンに手を伸ばす。白いリモコンは、薄暗い部屋でもなんとか視認が出来た。手探りで運転ボタンを押すが、エアコンは何も反応を返さなかった。

「あー…そうか…」

4月に毛布を部屋干しで乾燥させようとした時に、エアコンの電源が入らなかった事を思い出す。パタリと布団の上にリモコンが落ちた。忙しさと金欠で修理を後回しにしたのは良いのだがすっかり忘れていた。後悔、という言葉が今日の自分にはピッタリだった。

頭が鈍器で打ちつけられているかのような痛みを感じ、思わずうめき声が漏れる。片頭痛とも違う痛みだ。頭痛からか、胃の中に不快感が広がり、思わず、えずいた。

『水分だけでもとらなきゃ』

そう思い、凛は体を動かそうとしたが全く力が入らない。

『あれ、これヤバイやつかも…』

そう思った瞬間、彼女の意識は途絶えていた。


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