めいどかふぇをよこめに
「え? ちょっ、きゃぁっ……!」
多分、反射的に体が動いたんでしょうね。
ドッペル君が莉央ちゃんを押しのけるようにしてドリンクの前に立ちふさがり、落下しかけてるグラスを辛くもキャッチします。樹々君って運動神経が良いですから、ドッペル君はそれをフル活用してグラスが割れないよう頑張ったんでしょう。
けどまぁ、その辺りが限界ですよね。
「ひゃ……っ!」
キンキンに冷えたドリンクを矢継ぎ早に浴び、ドッペル君は悲鳴をあげてしまいました。いや、ホントに女の子っぽい『悲鳴』でしたね、今の。
さっきドッペル君、人格が歪みかねないと嘆いちゃってましたけど、ちょっと手遅れになってませんかね~?
「うつの……〝いつき〟ちゃん! 大丈夫かい!?」
「ちょ、ちょっとあんた、びしょびしょじゃない! えっと、ハンカチは……ってハンカチ程度じゃ足りないか。ねぇ、タオルは!?」
「分かってる! 誰か、大きめのタオルを数枚持ってきてくれないか……にゃ!」
「わ、分かったにゃ!」
まどかちゃんが陣頭指揮を執って一連のハプニングの収拾にかかり始めました。うふふ、カオスな事になっちゃいましたね~?
さて、今日はいきなり呼び出したのに付き合ってもらってありがとうございました。プリンまで奢ってもらってとっても嬉しいです、私。
いやぁ、最後は大変でしたね~。居た堪れなくなって莉央ちゃんが店の外に逃亡しちゃって、ネコメイドさん達が捕獲しに行くという珍事件。どっちがネコなのかって話ですよ。見てる分には面白かったですが。
さて、もう夕方ですね。莉央ちゃん達も帰っちゃいましたし、ドッペル君をこれ以上尾行しても面白い事はなさそうですし、今日はここで解散にしましょうか。
……はい? だから私は何者か、です?
もぉ、何度目です? その質問。飽きませんねぇ、あなたも。
ていうか、何とな~くヒントは出してるつもりなんですけど。少しは『あ、もしかしたら?』的な感覚とかないんですか?
……そうですか。まったく、これっぽっちもありませんか。ちょっとイラっとしますね、それはそれで。
って事で、やっぱり教えてあげません。悔しかったら想像力をフルに働かせて推理してみせなさい。
って事で、私はもぉ帰ります。あなたもお気をつけて。
あ、念のため言っときますけど。
私、またあなたの事を呼び出しますので、首を洗って待っててくださいね? うふふっ。
ストーキング×ストーキング ~こっち見んなヘタレ!~ 虹音 ゆいが @asumia
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