めいどかふぇ その2

 ほらほら、そんな事より私との再会を喜びましょう? ほらほら、やっほ~。


 こらそこ、うざいとか言わないの。お姉さん、泣いちゃいますよ~?


 え? そんな事よりドッペル君はどこか、ですって?


 私だけでは満足できませんか……むぅ、確かにドッペル君を尾行する、って名目で呼び出したんですけど、ちょっと悲しいです。


 まぁいいです。ドッペル君は、さっき会話してましたよ? あなたと。


 うふふ、分かりません? 最初にあなたを出迎えたネコメイドさん。〝いつき〟ちゃんがドッペル君ですよ?


(……人格が、歪む……!)


 あらあら、噂をすればドッペル君の心の声ですよ。


 お客さん達の視線の死角に逃げて、がっくりと項垂れちゃってます。なんかもう悲痛な感じが漂いまくってますね。


 さっきから見てる感じ、にゃーにゃー言うたびに精神をすり減らしてる感じです。それでも笑顔を絶やさないのはプロ根性ですよね~。


 決して広いとは言えない店の中、絶え間なく渦巻き続けるカフェオレよりも甘い声。お揃いのコスチュームに身を包んだネコメイドさん達と、異常なまでに高まった熱気と喧騒が独特の空間を創り上げています。


 私もこういう場所に来るのはこれが初めてですけど、戸惑っちゃいますよね~。……その割にはさっき、楽しそうににゃーにゃー言ってた? 何言ってるんですか、恥ずかしさマックスですよあんなの、うふふ。


 樹々君はこういう場所が苦手らしいので、その偽物であるドッペル君も苦手なんでしょう。それでも、中性的な見た目とはいえ男であるドッペル君が、女装をしてまでこの場にしがみつく理由は明白です。


「みんにゃ~、ご主人様が『ナポレオンケーキ』も食べてくれるそうだにゃ~」

『ご主人様、ありがとにゃん♪』


 バイトだから。まぁ、単純な理由ですよね~。


(気をしっかり持て……俺は宇都宮樹々。ネコメイドじゃない。違うんだ……!)


 甘ったるい声を喉から捻り出しながら、心の中で自分は男だと主張し続ける……うぅ、なんかちょっと泣けてきますね。健気と言うかなんというか。


 はい? そもそもなんでこんな事になっているのか?


 そうですね。じゃ、簡単にその経緯をお話ししましょう―――――

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