第64話 天使の皮を被った悪魔

 敵の黄金の機体の圧倒的な強さに押されていた。

 くそ。


 やられちまう。

 回し蹴りが来る。

 が、あまりの速さに反応が出来ない。


 腹部に衝撃が走り、機体が吹っ飛ぶ。

 Gが全身に掛かる。


 ――――数秒後。

 衝撃が全身に重くのしかかる。


 岩に衝突する。

「かはっ……」

 肺が締め付けられるかのような痛みに襲われる。


 敵は片腕を前に突き出して、手の平を俺に向ける。

 青白い粒子が彼の掌に集まり始める。


 明らかにやばい。

 どでかい技を繰り出す気だ。

 ――――超至近距離からの大技。


 操縦桿を握りしめる。


 全開のパワーで敵に向かって飛ぶ。

 青白い球がかなり大きくなっている。


 腕と肩を掴んで敵を押し切る。

「このっ!!!!」


 ドウッッッ!!!!

 再び電磁砲レールガンが発射される。

 青白い

 強力な電磁波が周囲に影響を与える。


 電子画面が大きく乱れる。


 電磁砲レールガンは地面に着弾し、巨大なクレーターを作った。

 凄い威力だ。

 でも、俺が今やることはもう決まっている。


 敵の腹部に蹴りを一発入れる。

 黄金の体が空を切り、吹っ飛ぶ。


 くそ。

 視線を左に寄せる。


 《機体破損率40%》。

 このままでは本当に俺達死んでしまう。

 どうすれば……。

 何か打開策は無いのか。


 思考を巡らすが、何も思いつかない。

 このままでは本当に死んでしまう。


 すると、突然閃光が空を照らした。

 天使が登場した時の様な――――。


「な、なんだ!?」

 少女。


 一人の少女が上空にいた。

 その姿は、本当に天使の様だった。

 金色の絹の様な髪が彼女の体を優しく取り巻く。


 浮遊魔術か。

 ていうか、生身で人型魔装兵器ホムンクルスに立ち向かうつもりか。

 無茶苦茶だ。


『キー……』

『キーって……まさか。お前の探していた奴か?』

 問うが、金石は答えない。

 反応が無い。


 唯々、目の前にいる天使を眺めている。

 見つめている。

 直立不動のまま。


 時間が止まったかのようだ。


 彼女は、人差し指を天に――――どこかにいる神様に向ける。

 その瞬間、五層もの魔法陣が上空に展開される。

 俺たちは魔法陣の中にすっぽりと収まる。


「おいおい。なんなんだこの馬鹿みたいに複雑な魔法陣は」

 複雑なだけじゃない。

 一つの国を滅ぼしそうなほど巨大な魔法陣だ。


 地上都市の逃げようとする。

 が、天と地を一線の光が繋ぎ、彼らを覆いつくした。


 ――――一瞬の出来事だった。


「え……?」

 先程いた地上都市の機体は跡形もなく消え去っていた。

 機影の姿はどこにも無かった。


 何か、凄いことになってきたな。


 天使は、澄んだ顔をしていた。

 敵の集団を魔法一つで壊滅させた。


 彼女は、天使の皮を被った悪魔だ。

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宇宙の旅路 阿賀沢 隼尾 @okhamu

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