第37話 ブラックチルドレン_1

そこには化け物しかいない。

 ――――地上都市パンドラ。


 その第五区に位置する場所に彼らの居場所はあった。

 ――――第五区。

 地上都市パンドラの心臓部だ。


 政府の様々な部門がその第五区に存在している。


 軍、経済、水産等々を回す政府の役人がこの第五区で生活をしている。

 が、その詳細は民間人には一切知られていない。


 その第五区のとある場所で超能力を研究する施設が存在していた。

 そのとある部屋に五人の子供たちがいた。

 部屋はカラフルで子供が好きそうな部屋だった。


 その中のリーダー的存在である漆黒の髪と瞳をした一人の少年が一言。

「もう、俺はこんな生活をするのはうんざりだ。わけの分からない場所に集められて、変な実験をさせられて。みんなもそうは思わないのか」

 が、他の四人は茫然と彼を見つめるのみ。


 そのうちの白髪の中世的な可愛らしい顔をした少年が言った。

「ブラック。そんなことを言っても、僕たちにはこれがあるんだよ」

 そう言いながら、首に嵌められている黒い首輪に手を当てる。

「この装置が無いと僕たちに勝機は無い。それに、僕はこのままこの中にいても良いと思っている。《パパ》達に申し訳が無いと思わないのか? 僕たちはこの《箱庭》の中以外のことは何も知らないんだぞ。そんな僕たちが《箱庭》の外に出ても何も出来ないさ」


「そ、それはそうかもしれないけどさ……。でも、俺は外の世界に出てみたい。ずっと、この箱庭の中で生きて死ぬのは嫌だ」

「んにゅ。それはそうかもしれないですけど、12年間この《箱庭》の中に住んでいますけど、私達そんなにこの中のことを知らないと思うんです。地図とかあれば別ですけど……」

 と、ピンク色の髪をした可愛らしい女の子が言う。


「確かに、ピンクの言う通りだな。地図があれば……」

「地図ならあるぞよ」

 赤髪の男の子が言った。


「なんだって?」

「地図なら、俺っちが持っているぞよ」


 赤髪の子――――レッドは端の方にあるおもちゃを探る。

 そして、一枚の紙きれを持ってきて、

「これがその紙ぞ」

 レッドはみんなの前でその紙を広げる。


「お、おおおぉぉ!!」

 確かにそれは地図だった。

 ――――《箱庭》の中身の地図。


「よくこんなの見つけたな。どうやって見つけたんだ?」

「ふっふっふ。みんな、この俺っちを舐るなぞよ。みんな、時々この部屋にいない時があったのを覚えているぞよか?」

 そんな時もあったような。


「やっぱり、なにかしていたのか?」

「ふっふっふ。聞いて驚くなよぞよ。俺っち、実は《パパ》の所に行っていたぞよ!!」

「「「「ええええ!?」」」」

 みんな驚愕。

 俺も驚愕。


 だって、《パパ》の所に行ける人は今まで誰一人としていなかったから。

 思ってもいなかったから。


 レッドはその紙を持って来るまでの経緯を話し始めた。

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