この世界に主人公と言う職業はない
長崎月&丘津真由
第1話 Another World Dream
23XX年X月X日、某有名ゲーム会社が日本中、いや世界中が楽しみにしていたゲームを発売した。
『Another World Dream』、通称『アナリム』。
VRMMOであるこのゲームのこのゲームたる所以は、その自由度にある。レベルにカンストというものがなく、職業、武器、アイテムの種類は今までにない豊富さだ。
プレイヤーはそれぞれ、ゲーム開始時に属性を選ぶ。その後職業を決定するのだが、魔導師でなくても自分の属性の魔法なら使うことが出来るのだ。
また、魔法には呪文が存在しない。いや、するのだが、自分で組み合わせることによって新たな技を作るのだ。呪文はそのショートカットの手段でしかない。
剣技も同様だ。剣と魔法の世界で、剣技と魔法の呪文がないという異質さからも注目を集めている。
強いプレイヤーには通り名がつけられ、そのプレイヤーは通り名持ちと呼ばれる。その中で、「月夜の死神」、「爆殺の鬼人」、「
「無音の暗殺者」こと、セルとルカ。彼らは、2人1組で「無音の暗殺者」だ。1人では意味がない。
2人にキルされた人々が、復活後に「なんの抵抗もできずに、剣同士のぶつかる音すらたてられずに殺された」と語ったことからその名がついた。
武器は2人とも片手剣に片手銃。狙われたら終わり、と言うのが、プレイヤー間での常識となっている。
セルはロングヘアの少女で、見た目はまだあどけない。スピード特化で、目にも止まらぬ速さで移動する。
ルカはやはりあどけない雰囲気を残した少年。セルほどスピードは出ないが、風の魔法で加速できたり、彼女よりも体力や防御力があったりするので、2人がペアを組めばバランスが整うと言う訳だ。
属性はセルが氷、ルカが風。2人が連携して魔法を組み合わせて戦うこともある。
「爆殺の鬼人」こと、オルガ。
属性は雷だ。
黄色みが強いブロンドヘアを2つに縛った少女で、お世辞にも頭がいいとは言えない見た目をしている。
実際はその真逆なのだが、あまり深く考えず行動する為、動向を読み切ることは誰にも出来ない。もちろん、はぐれ組のメンバーでもだ。
武器は金棒だが、ちゃんと使うことはあまりない。なぜなら、PKやモンスター討伐の際使うのは、属性のお陰で使える得意技「自爆」だからだ。もちろん、自爆と言っても、爆発するのは周囲であるため本人も死んでしまう訳ではない。
ちなみに、なぜ雷属性で爆発の魔法を使えるのかは未だに謎である。まあ、オルガ自身は気にしていないようだが…。
もうお分かりだろう。この爆発技を使い、いつ襲われるか分からないので「爆殺の鬼人」と呼ばれるようになったのだ。
「月夜の死神」こと、彗鈴。
魔導師でありながら、装備は巫女服と言う異様な見た目をしている。
PKの際はいつも大鎌を持ち、月の出ている夜にしか現れないのでこの通り名がついた。しかしオルガ同様、大鎌を使ってキルする訳ではないので、なんの為に持っているのかは謎だ。
魔導師の為属性はなく、どの魔法も使うことが出来る。しかし得意なのは闇属性の魔法で、PKでは呪いをかけることが多い。
いつも笑顔を絶やさず、キルするときもニコニコしているので、ちょっとした恐怖だそうだ。
そんな、最強にして最恐のメンバーで構成されたギルド「はぐれ組」にも、日常と言うものがある。
彼らの日常はと言うと…………
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