第41話 AI(愛)の冒険者登録 (後編)
ようやく話がまとまり登録作業も完了すると思われた時
ギルドの扉が勢いよく開いた
現れたのは一人の少女
開口一番
「なんで私だけを置いていくのよっ!?」
「勇樹の薄らトンカチ!」
どうやらかなりご立腹のようだ
「あら噂の『癒しの聖女』様じゃねぇか?」
「いやいや 聖女様があんなお転婆なはずがねぇ」
彼らがそう言うのも無理はない
広場で貧しい者たちに癒しを与える彼女は
いつも静かに笑顔を浮かべ慈愛に満ちていた
聖女たる態度を取る彼女
現在見せているお転婆な彼女
決して自分を偽っているのではない
それぞれが彼女の中一面であり
両方とも彼女なのだ
「え!? もしかしてアスタルテも冒険者になるの?」
「あったり前でしょ? 私を何だと思ってるの?」
「『癒しの聖女』?」
「まぁそれも当たってるけど」
「女神オーラが出すぎて? 当たりまくっちゃってるけど」
「それはあくまで任務の合間にやっている慈善事業よだっての~!」
「このうすらトンカチ!」
あ、また切れた
起こった時のボキャブラリーは少なめな女神だ
「じゃあ 本職は?」
「勇樹の監視に決まってるでしょ?」
「コイツ ほっといたらすぐ面倒事を起こすんだから」
どちらかと言えば星光教会に目をつけられて
追いかけまわされたのは彼女が原因だと思うのだが
それを口には出さない勇樹だった
(教会壊しちゃったの僕だしね)
「そっかてっきりアスタルテは僕らが冒険者の仕事をしている間も慈善事業をやるんだと思ってたんだ ごめんね」
素直に謝る勇樹
「でも、冒険者ってかなり危険よ」
「あなたが、私たちについてこれるのかしら?」
愛の『氷の女神』モードが発動した
「おめぇ冒険者舐めてんじゃねぇか?」
「何の戦闘能力もねぇ おめぇに出来るようなやわな仕事じゃねぇんだぜ」
今回は『炎の戦乙女』のナノさんも辛口だ
そして、何故かシャドウボクシングを始めるナノさん
照れている時限定だと思っていたが
流行っているのか?
流行らそうとしているのか?
リーウとルナは今日は大人しい
と言うよりも二人で冒険者になれたことがよほどうれしかったらしく
ここで迷惑をかけて取り消されぬように全力で大人しくしていた
野生の本能は闘争を求めているけれども
二人して冒険者になった後の準備についてなどの話をしながら
溢れ出る闘争本能を押さえ込んでいた
「舐めないでもらえるかしら?」
「私は『癒しの聖女』よ?」
「回復魔法のエキスパートなわけ」
「わかる?」
「防御結界だって張れますぅ!」
「それに強力な魔物が出てきたら」
「勇樹が私を守りなさいよね!」
武者修行の間、刺客たちから彼女を守ってきた
その活躍が評価され今回の大抜擢に繋がったのだ!
そう言い放ってから何故か顔を赤くして
急にシャドウボクシングを始めた
物凄くぎこちない動きで
周囲の冒険者を和ませたが
ナノはなんだかちょっとイラッとした
「確かに回復術師がいてくれると助かるね」
「じゃあ彼女の登録もお願いします」
「何だ? このハーレムパーティー?」
「俺も長年ハーレムパーティーを見て来たが」
「これほどハイレベルなハーレムパーティーは初めてだぜ」
なんだか年長の冒険者が
ハーレムパーティー専門家みたいなことを言い出した
中には「うらやましいな!」を連呼して
仲間の女冒険者に拳骨を食らっている気の毒な者も少なからずいた
いや、かなり多くいたと言っても過言ではないかもしれない
そしてようやくアスタルテの登録も無事終わった
このパーティーに限っては
通過儀礼と称して絡んでくる冒険者も居なかった
彼らは見てくれだけのパーティーではない
実力も超一流の
見た目ハーレムパーティーなのだ!
無事冒険者登録を終え帰路につく勇樹たち
だがギルドを出た直後
もうひと騒動起こることになるとは
勇樹たちに知る由もなかった
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