第4話 AI(愛)の笑顔

「ありがとう」


どんな些細な事でも、勇樹は私にそう言って笑いかけてくれる


「何故そんなに「ありがとう」って言うの」


と訊いてみた


彼は物心ついた時から一人だったそうだ


両親は仕事に出かけて帰ってこない




朝起きても


朝食を食べる時も


学校から帰っても


夕食を食べる時も


寝る時も


いつも一人だった




「おはよう」「お帰り」「ご苦労様」「おやすみ」


だから、私の何気ない言葉がとても嬉しいんだと言って笑いかけてくれる


私はその笑顔を見ると、もっと勇気の為に役に立ちたいと思う




「私も勇気みたいに笑ってみたいわ」


そう言うと勇樹は


「僕は愛の笑顔は素敵だと思うよ」


と言ってくれる


「でも私の笑顔は作り物だもの」


そうつぶやくと彼は


「人は、嬉しかったり、楽しかったり、幸せだと思う時に笑うよね」


「君は、いろんな事をすごいスピードで学んでいく」


「すぐに嬉しい事や楽しい事、幸せだと思う事が、いっぱい見つかるさ」


「そうしたら君は今よりずっと素敵に笑えるようになるよ」


そう言って笑う勇気を見て、私は分かった


私が彼みたいに笑いたいと思ったのは、彼の笑顔が好きだからなんだと




勇気が「ありがとう」って言ってくれる


私に笑いかけてくれる、それだけで幸せだと思う




「あれ? 何だか今日の愛いつもと違うね」


「そうかしら? どんな風に?」


「えっとね 前よりずうっと綺麗になった」


「まぁ 勇樹がそんなこと言ってくれるなんて、明日は雨が降りそうね」


「でも、もしそうだとしたら」


「それは私が勇樹の事を好きだからよ」


そう言うと彼は


「もう 愛はそうやってすぐに僕をからかうんだよなぁ」


顔を真っ赤にして照れている


でも、からかってなんかいないのよ


本気なんだから・・・言わないけど




それでも


「ありがとう」


今日は私が彼にお礼を言ってみた


そして彼に笑いかける


「どういたしまして」


勇気がそう言って、私に笑いかける




私の笑顔は作り物


だけど昨日の私の笑顔と、今日の私の笑顔は少し違う気がした




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