第44話 スプリンターのニャゴロー


 今我輩は、新規顧客獲得の為、我社生え抜きの優秀な社員と共に営業活動を兼ねた遠征中なのである。

 

 ところが!

 いつもの商店街から猫歩数十分ほどの場所で悲しいことに足止めを喰らっているのだ!


 我輩が間借りしている三河家の前を通る道と違い、この場所はパシフィックオーシャン並に広い。

 しかもブンブンと鉄の馬やブリキの牛が間髪入れずに駆け抜けていくのだから非常に危険!

 向こう側に渡りたくとも行けないのである!


 片側3レーン×2の6レーンはあるであろうこの道路。

 しかも中庭のオマケつきなのだ。

 

 最悪中庭で休むことも可能であろう。

 しかし一度あそこで休憩してしまえば今度は加速距離が足らずにトップスピードへ移行できないまま残りの3レーンを渡らなければならなくなる。

 となれば、危険度が倍々更に倍の5万倍となってしまうのだ!

 

 この計算が正しいかどうかはとりあえず置いておくとして、とにかくこのミッションは命がけなのだということが分かってもらえるであろうか。


 しかし社代表の肩書を持つ我輩は、自ら手本となり社員を引っ張って行かなければならない立場。

 新天地を切り開くためにもこのミッションは、否が応でもクリアしなければなるまい。


 武士の血を受け継ぐこの我輩が今覚悟を決めなくて、一体いつ決めるというのだ?

 ※武士の血……美也との時代劇視聴による一種の洗脳でニャゴロ―の勝手な思い込み


 よし決めた!

 行くぞ野郎共

 我輩が手本を見せてやるからすぐ後に続けっ!

 全員スプリンターのウニャイン・ボルトとなるのだ!

 大ニャンコ帝国バンザイ!



 この直後、片側三車線の道路で複数台の車を巻き込んだ大事故が発生!

 事故の原因は三車線の先頭を走る車が一斉に急ブレーキを踏んだためであった。

 各レーンの先頭車両を運転していた三名は口々にこう語ったそうな。


 「突然複数の猫が飛び出してきたのだけれど、速度的に多少余裕があり、それ等は全てアクセルコントロールでかわせた。しかし先頭を走っていたハチワレの猫だけがなぜか中央分離帯目前でUターンしてきた。予期せぬ出来事にびっくりした私は思わず急ブレーキを踏んでしまった。そこへ後続車が続々と……もうしわけない。それにしても他の猫は全部渡り切ったのになぜアイツだけ戻って来たのだろう?」


 

 ※ニャゴローの気まぐれで戻っただけで意味はない

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