第30話 保育士ニャゴロー①
「ニャーニャー」
蒸し暑いこの時期、あちらこちらで子猫の鳴く声を耳にする。母ネコが子供をあやす姿を目にすると我輩とて心癒されるのである。
毎日のように訪れるこの公園にも子猫が増えた。どこぞの偽善者が毎日せっせと食堂へカリカリを運ぶため、ここを塒にする流れ者が増えた結果である。
「ニャーン」
ご多分に漏れず食堂でカリカリをつまんでいると、どこぞの子猫が我輩の優雅に舞う尾へとじゃれつき始めた。右へ左へと流れる様に尾を動かすと、それに合わせて子猫の身体も右へ左へ。けなげで一生懸命なその姿に誰しも頬が緩む。それにしてもカワイイなおい!
「ニャギッ!」
フワフワ揺れる尾に、思い通りとならず苛立った子猫はなぜか我輩の後ろ足へと抱き着いた。そして……
{ガブッ}
突然全身を駆け巡る激痛!
ニャン吉やニャン太郎などの並の猫ならば痛みに耐えられずショック死必至!
この我輩とて多少とはいえ脱糞する始末!
とにかく痛いのであるっ!
痛みを我慢して痛みの元である後ろ足へ目を向けると、そこには全爪と牙を使って絡みつく赤く染まった子猫の姿が!
なめるなよ子猫風情めが!
我輩の崇高なる血液で全身を赤く染めよってからに!
「グヘニャンッ!」
宙を舞う赤い子猫。
思うより先に体が動いてしまった我輩。
無意識のうちローリングソバットをかましてしまったようである。
{ガサガサッ}
幸いにも職員の刈った草で出来た山へと落ちた模様。
大人げないと我輩チョッピリ反省。
こうはしていられないと素早く子猫のフォローへ。
とりあえずこの目の前にある雑草群を抜ければ子猫の落ちた場所への近道となる。
今行くぞ子猫よ!
この日、公園で働く職員たちは無残に破壊されたアライグマの巣を発見する。不思議と至る所が赤く染まっていたとのこと。
同じ日、アライグマの親子が赤く染まった黒白のボロ雑巾を奪い合うように咥えながら歩く姿があちらこちらで目撃されたのであった。
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