第14話 衛生管理者ニャゴロー④


 はぁぁぁぁぁっ!

 こ、これは一体!?


 我輩が八百屋に到着し、一番最初に抱いた感情を人間の言葉で表してみた。

 ズバリ〝衝撃〟である。


 所狭しとならんだあの〝赤い悪魔〟。 

 そう、これは我輩の最も苦手とする野菜、ドゥルッドゥル玉である!

 ※トマト


 今はパスダウェイしたボケ店主が事あるごと我輩の口にねじ仕込んできた為、ある種トラウマに。

 そもそも青クッサイんだキサマはっ!


 見れば見る程ムカッ腹が立つ!

 それにお前等は腐っているから中身がドゥルッドゥルなのではないか?

 となれば早めに何とかしなければ他の野菜も巻き込まれて痛むのではないのか?

 

 かの有名教師の説いた〝腐ったミカンの定理〟がある。

 ケース内で腐ったミカンを発見したならば、即……潰してしまえだっけな?

 (本来取り除かなければ腐敗が伝染)


 えぇい、こんな場所でグジグジ考え込んでいても埒が明かんわ!

 定理に乗っ取ってコヤツ等を潰しまくってやれっ!

 衛生管理の名のもとに、我輩がこの八百屋を腐敗菌から守ってやるのだっ!



 こうして店頭に並ぶ全ての赤い悪魔を潰しまくったニャゴロー。

 牙でグチャグチャ、或は爪でギッタギタ、更には床に落としてベッチョリベッタンコに。


 勿論トマトは腐っていた訳ではない。

 熟れて食べ頃なのを現店主の目利きで選りすぐり陳列。

 しかも潰したのはトマトだけではなく、豊潤で香り豊かなイチゴも多数混じっていた。

 中には地方の八百屋にはあるまじき一粒数千円のものまで含まれていたそうな。


 一仕事終えたニャゴロ―が姿を消した後、運悪く店頭に顔を出したニャン吉。

 ニヤリと笑みを浮かべた店主に抱き抱えられ奥へと消えて行ったそうな。

 その後彼の姿を見たものは……

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