第2話 八百屋のニャゴロー
「らっしゃいらっしゃいっ! 今日はトマトが安いよっ!」
威勢のいい掛け声。
通り行く人たちを呼び止める巧みな話術。
そう、ここは詐欺師〝八百屋〟の軒先である。
通貨を支払わせてあんなドゥルッドゥルの豊富な赤きゼリー玉を売りつけるなど、これが詐欺でなくて何なのか!
正義の番人である我輩が成敗してくれるわ!
ところが!
超ラブリーな我輩が店頭で八百屋の主人をじーっと見つめていたおかげで……
「あらかわいい猫ちゃん。この子は八百屋さんとこの子なの?」
「さぁー? でも時々店頭に立ってはお客さんを呼び寄せてくれるんでぁさー。これぞ招き猫ってな感じでね!」
「こんなかわいい子が店番してるなら次もまたお邪魔するわねー」
「ありがとやしたーっ!」
そんな感じで訪れる人間が後を絶たない。
おかげで制裁どころか人間の雌に抱きかかえられてはもみくちゃにされる始末。
えぇい、我輩は玩具と違うぞ!
隙を見計らって逃走を図ろうとするも、これまた難しいのなんの……トホホ。
そして解放されたのはなんと1時間後であった。
詐欺が上手くいき、ホクホク顔で諭吉や英世を数える八百屋の姿はまれにみる外道!
しかしもみくちゃによりスタミナを奪われた我輩は最早グロッキー寸前!
仕方がない、神の裁きを下すのはまた改めてとするか。
それはそうと先程からなにやらお腹がゴロゴロするな?
これはもしや……?
そんな時、店舗の奥に複数ある大きな古臭い木桶をマイマナコがキャッチ!
あれは一体?
グルグル鳴り響くお腹に最早猶予は無い。
だが、どうにもあの巨大な物体が気になる!
我輩の脳内そろばんが激しく振動、即座に好奇心優先との答えを弾き出す!
仮に限界点突破で肛門が爆発しそうなときの答えはこうだ。
〝最悪その辺りでまき散らせばいいんじゃね?〟
ふぅ、なんと潔い猫心!
となればもう迷いなど皆無。
肛門に力を込めると、その座棺よりも一際大きな桶の天辺へと一気に駆け上がる。
前のめりで中を覗くとその中身はなんと!
ウンコではないか!
こいつは誰がどう見てもウンコ以外の何物でもないであろう!
ナ~イスタイミング!
偶然にも我輩お腹がキュルキュルしておる。
これは働き者の我輩へ神からのプレゼントであろうな。
まさか八百屋に肥溜めがあろうとは思わなかったわ!
では早速。
{プリプリプリ……ビチビチビチ!}
この一週間後、暫く八百屋はシャッターが閉まったままの状態となった。
そこには一枚の張り紙がしてあり、内容はと言うと……
『当店の漬物から大量の大腸菌群が検出されました。この度ご購入されたお客様には大変なご迷惑と重大な被害を与えた事を心よりお詫び申し上げます。尚、保健所の指示により暫くは……』
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