茜色の空

須川  庚

プロローグ

 わたしはすぐに起きる。

 ベッドから降りて、少しだけあくびを噛み殺して、制服に身を包む。

 紺のセーラーワンピースには襟と袖口、スカートに青の一本線が入っている。

 もぞもぞと二段ベッドの上段から、起きてきたのはルームメイトの子だ。

夏海なつみ~、おはよー……」

「あっ、詩音しおんちゃん。おはよう! 今日から三年の一学期だよ?」

 ルームメイトの城山詩音ちゃんは、二年のときに編入したときからの友だちで、とても活発で明るいの。

 かわいらしいルックスで、中学時代に柔道部で全国制覇して、現在も柔道部女子主将というギャップで、ファンが多いみたいだ。

「詩音ちゃんはすぐ、顔を洗わないとね」

「え? ヤバい?」

「うん。よだれがついてる」

 詩音ちゃんはすぐに洗いに行く。

 わたしは制服に着替えた詩音ちゃんと一緒に、寮の食堂に行く。

 わたしの暮らす206号室には表札みたいに名前のプレートがはまってる。

『城山詩音』

『城沢夏海』と、書かれたプレートで、わたしは下のプレートの名前だ。



 これから、海が丘学院での高校生活の最後の一年間が始まった。

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