第36話 バッド・オープニング
中国で核攻撃があった数日後、緊急のミーティングチャットが開かれた。リーパーもそれに、インターフェースで参加していた。
『我々は『スカーレットオプス』。アメリカ軍の中の『主戦派』と対抗するアメリカ軍内の派閥だ。諸君ら、ストライク・ブラックの協力を心より感謝する。』
アメリカ国旗である星条旗に、ナイフが刺さっているマークの『スカーレットオプス』は、ストライク・ブラックに加盟した新たな組織だ。
今話しているのはスカーレットオプス幹部のアメリカ陸軍、カルロス・ダイナー少佐だ。
『現在、アメリカ軍内では『主戦派』が指揮権を握っている。彼らは戦争を望み、殺戮を望んでいる。簡単に言うと殺戮が趣味のサイコ野郎の集まりだ。そんなクソ野郎共と対抗しているのが、我々スカーレット・オプスだ。我々は戦争を望まない。平和を望む。』
『それで、我々に何を望むと?』
EU大統領がカルロス少佐に問う。
『先日あった中国での核攻撃を理由にアメリカもあの戦争に干渉しようとしている。』
『ほぉ、他のNATO抜きでか?』
『そうだ。しかも、干渉する理由は2つ。1つは戦争ビジネスでガッポリ稼ごうってトコだ。』
『そんなの、毎回アメリカが戦争をする理由の1つだろう。』
EU大統領がそう言うと、ミーティングチャットに参加していた代表も口々にそうだと言う。
『2つ目がヤバい。アメリカが戦争に参加しようとしているもう1つの理由。それは、新兵器をあの戦争で実験しようとしている。主戦派の連中はそれを抑止力にして、再び世界の主導権をアメリカに持ってこようとしている。』
『し、新兵器だとっ!?』
ミーティングチャットが騒がしくなる。
『そこでだ。新兵器を極秘裏に開発している施設―――スターストライプス島を襲撃。新兵器を破壊、または鹵獲して連中の戦争参加を防ごうって作戦だ。』
騒がしかったミーティングチャットが静まり返った後、少佐が提案した作戦への賛成の声が多く聞こえた。
『マスター、これは我々の持てる戦力で阻止しなくてはなりません。ご決断を、、、。』
EU大統領がマスターに決断を迫る。ミーティングチャットが一気に静まり返った。
長い沈黙と後、マスターが口を開いた。
『致し方が無い。我々ストライク・ブラックは、アメリカの戦争阻止を決行しよう。』
マスターがそう告げると、ミーティングチャットからは歓声が多く聞こえた。
『良いな?リーパー。』
マスターが今まで沈黙を破らなかったリーパーに問う。マスターが口を開くと、一瞬でミーティングチャットは静まり返った。
そして、リーパーが口を開く。
「心得ました、マスター。」
リーパーはアメリカの戦争阻止を承諾した。
『そうか。それではもう1つ。今回は部隊を作ってもらう。』
マスターはリーパーに命令する。
「マスター。しかし、自分は1人の方が戦いやすいです。お荷物を背負っていると戦いづらいものでしてね。」
『リーパー、君は優秀だ。実に優秀だ。そんな優秀な君にさらに強い組織を造っていって欲しいのだ。勉強だと思って、やりたまえ。良いな?』
マスターはリーパーに圧力をかける。さすがのリーパーもマスターの命令に逆らう訳にはいかなった。
「こ、心得ました。」
『ならばよろしい。作戦要項はこちらで話し合う。君の所に今から部隊を派遣しよう。仲良くやりたまえよ。』
「了解。それでは失礼します。」
リーパーはミーティングチャットから退席した。一息ついた彼は近くにあった椅子に腰かける。
「あーぁ、面倒な事になった、、、。」
そう言って夜の海の向こうを見つめた。空には月と無数の星、海面には月明かり。そんな景色を彼は面白く無さそうに眺めた。
翌日。彼はユニオンベースの自室では無く、自分のオフィスに居た。ここが彼の仕事部屋である。ガラス製の机が中央に置いてあり、照明が部屋を照らしていた。
彼は暇そうに椅子に座り、クルクルと回っていた。
―――あーぁ、部隊なんて嫌だ。
今日はリーパーの部隊との顔合わせの日である。だから彼はオフィスに居る。
彼はオフィスをここ半年以上利用していないが、部屋はキレイにしてあった。おそらく、ストライク・ブラックの清掃要員が清掃していて部屋を綺麗に保っていたのだろう。
彼はインターフェースでアマゾンプライムビデオを鑑賞していた。ちなみに、観ているアニメは『魔装学園ハイブリットハート』である。彼はアニメが大好きだ。リーパーは見かけによらずアニメオタクなのだ。
見ているアニメの内容は少しエッチなものだが、リーパーは何事も無く鑑賞していた。
「何観てんだ?」
「ウァァアアア!」
いきなりプライスがリーパーに話しかける。アニメに夢中だったリーパーはいきなりの声掛けに驚きを隠せなかった。
「プライス、部屋に入る時はノックをしろ。分かったな?」
リーパーはプライスの襟を掴む。
「わ、分かったから手を放してくれ兄弟。お、表にお前の部隊を待機させている。」
「チッ、地獄に落とすのはまた今度の機会にしてやろう。」
リーパーはプライスの襟をパッと放した。プライスはストライク・ブラックの制服の襟を正す。
「じゃあ、お前の部隊を紹介しよう。入って来い!」
プライスは外に待機させていたリーパーの部隊に、部屋に入って来るように合図を出す。
すると、部屋のドアノブが回って、ドアが開く。
そして、これからリーパーの部隊となる男1人、女2人の兵士達が入って来た。
「部隊員、全員集合いたしました!副隊長殿!」
一番背の高い女性兵士が敬礼をしてプライスに報告する。
「ご苦労だ少尉。さぁ、これがお前の部隊だ。リーパー。」
最後にプライスがその列に加わり、敬礼をした。それに合わせて残りの部隊員も敬礼をする。
「あぁ、面倒な事になったぜ、、、。」
リーパーは顔を手で覆う。
「リーパー殿の部隊に配属になりました!ロメオ・ベルンハルト中尉、16歳であります!」
すると、さっきの背が高く、金髪でロングヘアで巨乳の女性兵士がリーパーの前へ出て敬礼をした。
「あぁ、そうか。では少尉、何故お前は戦う?」
リーパーはロメオ中尉に聞く。
「世界を統一し、世界に真の平和をもたらす為であります!」
「そうか中尉。君とは仲良く出来そうだな。少なくともプライスよりは。」
リーパーはやる気に満ち溢れているロメオ中尉と握手を交わす。
「―――ほぉ、リーパーは巨乳で釣れたな。」
プライスがそうぼやくとリーパーはプライスに鉄拳を喰らわせた。彼は気絶をし、その場に倒れた。
「中尉、俺は貴官の身体には興味が無く、性的な行為をしない事をここに保証しよう。」
リーパーはロメオ中尉にそう言った。
「ありがとうございます、隊長殿。私もそうして頂けると幸いであります。」
ロメオ中尉は再び敬礼をした。
「次。そこのお前だ。」
リーパーは中背で銀髪の女性兵士を指さした。彼女はロメオ中尉とは違い、胸は無かった。貧乳である。
「―――あ、、あの、、、」
彼女はおどおどしながら隣の男性兵士の後ろに隠れる。
「が、ガトー君、、、。」
そう言って隠れてしまった。すると、リーパーはその男性兵士の後ろから涙目の女性兵士の襟を掴んで壁に叩きつける。そして、G18Cを彼女の頭に突き付ける。
「遺言を言え。お前の様な荷物はここで粛清してやる。」
「ゴメンなさいっ!ゴメンなさい!」
彼女は泣きながら何度も謝った。しかし、リーパーは銃口を突き付けたままだ。
「良い事を教えてやろう。お前は早死にする。あるいは、敵の性欲を持て余すおもちゃにされて、死ぬまで犯されるだろうな、、、。」
「嫌です!絶対に嫌!」
「それか、この場でお前を犯してやっても良いんだぞ。」
さらに、リーパーは彼女の耳元でこうささやいた。
「―――お前、あの男の事が好きなんだろう?じゃあ、あの男の前で俺とのセックスショーを開いてやろうじゃないか。お前の処女膜を激しく破って血だらけにしてやる。その後は何度も俺の子種を孕んでもらおう。良い子を産むんだぞ。」
「嫌だ!放してぇっ!!そんなの嫌だ!絶対に嫌なの!!」
そう言ってリーパーに抵抗するが、リーパーには抗えなかった。
「いい加減にしろぉぉぉおお!!」
すると、彼の部隊の『ガトー』と呼ばれた男は、リーパーにナイフで斬りかかった。リーパーはG18Cで受け止める。
金属が擦れ合う音がジリジリとした。G18Cのフレームに傷が付く。
「落ち着け。冗談だ。」
リーパーはそう言って彼女を放すと、彼もナイフをしまった。彼女は服を直すと、再び彼の後ろに隠れた。
「良いか?戦場に恋愛感情などという邪魔な不確定要素は持ち込むな。分かったな?あと、俺の部隊はキツイぞ。辞めるなら今のうちだな。」
リーパーはそう言った。重い空気が部屋を包み、初めての顔合わせは最悪なものとなった。
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