第33話 背負った想い

「さぁ、今殺してやるからな!!」

 敵がバラライカに近づいた、その時――――、

「ウハァァッ!!」

 敵が頭から血を流して倒れた。血が周りの敵に飛び散る。

「畜生ッ!どこからだ!?」

「分かりませんッ!!」

 敵が混乱し始めた。バラライカはそれに便乗して、反撃を開始する。

「クソッ!早くソイツをぶっ殺せ!!」

 敵がバラライカに向けて発砲を開始。しかし、バラライカは物陰に隠れてそれを回避する。

 そのうちにも敵の数が次々に減っていく。

「リロード!!カバーしてくれぇ!!」

 その声を聞いたバラライカは物陰から飛び出し、敵に攻撃。敵は胴体に数発喰らって倒れる。

 バラライカはすぐさまローリングをし、次の物陰に身を隠す。

「撃てぇぇえ!!」

 敵はバラライカに銃弾の雨を降らせるも、バラライカは物陰でそれを凌ぐ。

 敵の銃撃が止んだ隙にすぐさま発砲。敵を無力化する。しかし、最後のマガジンを使い切ってしまった。

「ウァァアアア!!」

 バラライカは銃を捨て、ナイフを右手に持って敵に突っ込んでいく。銃弾が彼女の左手をかすめる。しかし、彼女は敵の首にナイフを刺した。血がダラダラと流れる。

「構うな!殺せ!」

 他の敵はバラライカに発砲する。しかし、バラライカは敵の身体を盾にして凌ぐ。敵の身体は穴だらけになってしまった。

 そして、敵の銃を奪いって発砲。敵を次々に撃ち殺し、全ての敵を撃ち殺した。

「、、、クッソォ、、、。死ねぇぇええ!!」

「!?」

 まだ生き残っていた敵がいたのか、バラライカの10m後ろからバラライカにSIG P229を向けている敵がいた。

―――もうお終いなの、、?まだシャドウを助けていないのに、、、。

 そう思った瞬間だった。

「グハァッ!」

 敵の頭に銃弾が着弾。敵の頭から血が流れた。

「どこから!?」

 バラライカは辺りを見回した。すると、空には1機の見慣れたヘリコプター―――ヴェノムが飛んでいた。



「クソッ!アイツは俺の獲物だぞ!リーパー!」

 そのヘリコプターの中では、プライスがリーパーに獲物を横取りされて怒っており、リーパーに中指を立てていた。

 プライスとリーパーの手には、バレットM98Bがあった。M98Bは、バレット社のボルトアクションスナイパーライフルで、.338ラプアマグナム弾を使用する。

「お前が殺しきらなかったのが悪い。アマチュアめが。」

「あーあ、そうですよ。俺が殺しきらなかったのが悪かったですよ!」

 プライスは機嫌が悪かったが、外に光った所に発見した為、1発撃つ。恐らく敵のスナイパーがこちらを狙っていたのだろう。リーパーがスコープでそこを覗くと敵スナイパーが頭から血を流して倒れているのが確認出来た。

「人が話してるトコを物騒なモンで覗くんじゃねぇ!ぶち殺すぞ!」

「いや、死んでる。」

 プライスの見事な反射によるカウンタースナイプは、確かに敵を殺していた。殺した相手に「ぶち殺す」はもう遅いだろう。

「それにしても、、、オタクの組織って、色んな武器持ってんだな。」

 プライスは自分の手に持っている銃を指さしながらそう言う。

「あぁ、銃の品ぞろえだけは天下一だろう。マスケット銃からレールガンまであるって噂だ。」

「レールガン、、、?」

「あぁ、試験開発段階だそうだがな。レールガンってのは、電磁力で弾をクソ早く、クソ遠くまで飛ばせる銃だ。」

「って事は、威力はどうなんだ?」

「そりゃもちろん、威力もクソ高けぇだろうな。なんせ、2キロ先の敵を弾道補正無しで殺せるってヤツらしいからな。」

「ソイツぁ、スゲェ。使ってみたいモンだ。」

「じゃあ、アフリカに行くんだな。今、アフリカ統一戦争やってんだろ?そこで試験してるって話だ。」

 現在、アフリカではアフリカ連邦政府がアフリカ大陸統一の為、戦争をしている。アフリカ連邦政府はストライク・ブラックに加盟した為、ストライク・ブラックからの武力支援、資金援助などを行ってもらっている。彼らが世界のどこかで戦っている中、世界は大きく動いているのだ。



―――外で何があったんだ、、、?まぁ、どうでも良いか。俺は死ぬんだ。でも良い。俺は疲れた。アスカ、もう少しでアスカの所に行くからね。

 シャドウは飲まず食わずで、随分とやせ細っていた。彼は生きることを拒絶した。彼は死を望んだ。愛しの妹の所へ行きたい。ただ、そう思っていた。

 その時だった、

『お兄ちゃん』

―――アスカ!

 彼の目の前に死んだはずの妹、アスカが現れたのだ。白く綺麗なワンピースを着て、笑っている。

―――アスカ、俺はもうダメだ。でも、良いんだ。アスカの所へ行ける。それだけで俺は嬉しいんだ。

『何バカな事言ってんの!?お兄ちゃんバカじゃない!?』

―――俺はもう疲れたんだよ。だから、もう良いんだ。

『全く、お兄ちゃんってバカだよね。』

―――そうだ。俺はアスカを守れなかった大バカ者だ。だから、俺はもう必要とされてないんだよ。リーパーにの迷惑掛けるし、何よりバラライカにも、、、。

『良い?私は死んだけど、お兄ちゃんのせいじゃないから!何で自分が悪くないのに落ち込んでんの!?やっぱりバカだよ。』

―――じゃあ、誰が俺なんかを必要としてるんだ?教えてくれないか?アスカ。

『あーあ、呆れた。例えばお兄ちゃんの友達の、、、、誰だっけ?あの不幸そうなあの顔の、、、』

―――リーパーか?

『あぁ、そうソイツ。リーパーがお兄ちゃんを必要としなくても、世界で1人だけお兄ちゃんを必要としている人がいるでしょうが!』

―――だ、誰だよ!?

『お兄ちゃんっていつからツンデレになったの?まぁ、ムッツリスケベなのは前から知ってたけど。』

―――お、俺はスケベなんかじゃ無い!!

『ふーん?そう。なら、どうして毎回コンビニ行った時にえっちな本眺めてるのかな~?』

―――う、うるさいっ!

『やった!お兄ちゃん少しだけだけど元気になった!』

―――それで、だ、誰が俺を必要としてるんだよっ!

『それは自分で探さないと。そう言ってたでしょ?あの不幸顔も。少しくらい素直になっても良いんじゃないの?お兄ちゃん。』

―――そうか、、、そうだな。ありがとう。アスカ。最後に、お願いを聞いてくれるか?

『何?お兄ちゃん。』

―――頭を撫でて、ハグしても良いか?

『フフフッ、ダメ。だってお兄ちゃんには頭撫でてハグする相手はいるはずだよ?』

―――それでも、、、。

『ダメ。それは死んでからのお楽しみにしよ?あ?変な事で死んだり、人に最低な事したら許さないからね。』

―――分かった。そうするよ。

『それじゃ、またねお兄ちゃん。愛してるよ。』

―――ま、待ってくれ!まだ俺はどうしたら良いか、、、、。

 そう言って彼女はシャドウの前から消えてしまった。彼を孤独が襲う。しかし、彼はもう平気だった。

―――ま、良いか。ありがとう。アスカ。

 彼は生きる気力を取り戻した。自分を必要としている人がいる。そう思うだけで胸がいっぱいだった。

「シャドウ!大丈夫!?」

 彼の居る部屋にバラライカが急いでやって来た。

「――――、バラライカ、、、、。」

 彼女は無言で彼に抱き着いた。彼女のハグは温かく、力強いハグだったが、それが心地良かった。

「バカ、、、バカ、、、、バカバカバカ、、、。」

 彼女の目からは涙が流れていた。彼女の涙がシャドウを濡らす。

「何が悲しむなよ、、、。アンタが居なくなったら悲しくなるに決まってるじゃない!」

「ゴメン、、、。俺は、、、」

「ちょっと黙って、、、。」

「えっ、、?」

 すると、バラライカはシャドウの唇に自身の唇を重ねた。

 初めはただ唇を重ねただけだった。しかし、柔らかい唇の感触はお互いの思考回路を麻痺させる

「―――んっ、、、、。」

「――――ハウッ!?」

 バラライカはシャドウに柔らかい舌を入れる。シャドウも最初は驚いたが、自身の舌をバラライカの舌に絡めた。バラライカもシャドウの舌を絡める。口の中が暖かい。お互いの唾液が口の中に入っていく。しかし、それが心地良い。

「――――んっ、、、。んっ、、、。ぷはぁ!ハァ、、、ハァ、、、。」

「ハァッ、、、。」

 名残惜しそうだったが、お互いが一斉に唇を放した。タイミングも何も取っていないのに息がぴったり合っていた。

 その時に、ずっとしていたためか、お互いの混じり合った生暖かい唾液がお互いの口元に付いていて、糸状になってお互いの口元をかろうじて繋いでいたが、だんだん細くなっていき、しばらくしてから『プツリ』と切れてしまった――――。

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