第28話 エージェントはいつの眠るか?

「017だと?まぁ、所詮はイギリス王室とかいうザコの犬だ。良い子にそこで寝てな。」

 リーパーは017にブーイングをする。

「君、今イギリス王室ロイヤルをバカにしたね?取り消すなら今のうちだよ。」

「誰が取り消すか。デケェ口叩くのはせいぜい100年前で終わりにしてくれ。」

 リーパーはさらに中指を立てる。流石の017も苦笑い。そして、シャドウが017に向かって発砲をする。

「この国の姫様を犯してやるよ。」

「イギリス王室への侮辱は許さん!!まずはお前から死ね!!」

 その言葉に017は激怒し、シャドウに向かって発砲をした。しかし、

「痛てぇぇぇぇええ!!」

 017の発砲した銃弾はシャドウに直撃したのだが、傷を1つも負っていない。

「ヘッ、やっぱりケブラー素材には頭が上がらねぇな。MI6の殺しのライセンス|(マーダーライセンス)持ちのエージェントでも攻略不可能なんだからよ。」

 シャドウはケプラー素材。つまり、防弾素材をふんだんに使用した装備で身を固めている為、9×19mmパラベラム弾のダメージを無効化した。

「やっぱり、防弾装備は着ていたようだね。でも、これはどうかな?」

 017は次なる銃――FN57拳銃を懐のホルスターから取り出すと、シャドウに向けた。

「今度こそ死ね。」

 017はその拳銃のトリガーを引いた。

「シャドウ!伏せろぉ!!」

 すると、リーパーは大声を上げた。シャドウは言われた通りに伏せた。そして、リーパーは腕を自分の前でクロスさせた。

――パンッ!!

 凄まじい金属音が響き渡る。

「危ねぇな。5.7mmは反則だろうが。英国クソ紳士が。」

「おぉ、よく弾いたね。FN5.7mmを。」

 017がFN57で発射した銃弾は、5.7mm×28弾。この弾を撃てる銃は数少ないものの、爆発や銃弾から身を守る『ボディーアーマー』を貫通する威力を持っている。小さいながら、バカには出来ない――、いや、小さいからこそバカには出来ない銃弾だ。 

「いや、助かった。近接格闘戦CQCのアンチナイフ用に日本の合金を腕に入れておいて。日本の合金じゃなかったら貫通して、今頃両腕からミートソースがドバドバ出てきてたとこだった。」

「もう、銃で語り合っても時間の無駄みたいだ。僕は、ナイフで直接君達を殺すよ。」

 017は折りたたんでいたバタフライナイフをクルクルと素早く回転させて展開し、右手に持つ。

「そうか!じゃあ、初めに俺と話そうぜぇ!!」

 床に座っていたシャドウは自分の日本刀を鞘から抜き、身構える。

「じゃあ、僕からいくよっ!!」

 017はシャドウに斬りかかる。

「俺の相棒―――、鬼影冷血の錆になるやつがまた1人増えたぜ!!」

 シャドウは、斬りかかってきた017を鬼影冷血で受け止める。

「この鋭利さ、この強度、この輝きこそ確かな日本刀だ!!君を殺したら僕がこの刀を継ぐよ。大切にする事は今ここで約束する。」

「流石は英国紳士ってトコだな。でも、それは出来ねぇ、、、。何故か?それは、今ここで死ぬのはお前だからだぁぁぁああ!!」

 シャドウは両手でしっかり握った鬼影冷血を017に振りかざす。

 スッ――と、017のスーツをその刃でかすめた。かすめただけだった。

「ただかすっただけなのに、僕の防刃仕様のスーツを斬るとは、、、。流石は日本刀だ。」

 017は、息を荒げながらナイフを構える。

「隙だらけだぜ!英国紳士さんよぉ!!」

 そんな017をシャドウは隙を見せずに斬りかかる。

「君は紳士じゃ無いな。人が君の刀を褒めているのに斬りかかるなんて、、、。」

 017はその鬼影冷血に比べれば小さなバタフライナイフで鬼影冷血を受け止める。

「褒める?そんなのは戦いに無用なんだよ!!殺すか死ぬか。それだけなんだよ!!」

 017が一瞬よろけた。シャドウはその隙を見逃しはしなかった。鬼影冷血を思いきり振る。

 すると、空中に血しぶきが舞う。白銀に輝いていた鬼影冷血の刃に赤黒い血がべっとりと付着する。

「危なかったよ。直ぐに引かなかったら僕の身体が真っ二つになってるところだった、、、。」

 それでも彼は――、017は死ななかった。ギリギリのところで身を引いた為、胴体に深い傷を負っただけで死にはしなかった。しかし、残念ながら彼の防刃スーツは役割を果たさなかったようだ。

「出血が酷いね。これじゃあ早く君達2人を殺さないと僕が持たないよ。」

 017は傷口を触って容体を確かめる。どうやらこのままでは自分は長くは無い事を悟ったのだろう。

「残念。お前は死ぬんだ。」

 戦いの様子を見ていたリーパーは、017に指をさしてそう言った。

「このままではお前はもう長くは無い。お前は残念だが、王室の要望には応えられなかった様だな。」

「黙れ、、、」

「お前は散るんだよ。無残にな。」

「黙れ黙れ黙れ、、、」

「あんなユニオン・ジャックに忠義を尽くしたのが間違いだったな。」

「黙れ黙れ黙れ黙れ、、、、」

「今日のティーパーティーはお開きみたいだな。さようならだ。」

「黙れぇぇぇえええええ!!」

 017はそう叫ぶと、いきなりシャドウでは無くリーパーに斬りかかった。

「クソッ!」

 シャドウが鬼影冷血を振る。017の背中が斬れたものの、彼はリーパーに斬りかかった。

「コイツを使う番が来たみたいだぜ。ルーン閣下殿。」

 リーパーは017が迫る中、1本のペンをを取り出した。そして、そのペンのクリップに指を掛ける。

「アァァァァ!!」

 017はもう10m先という距離まで近づいてきた。

「さようならだ。エージェントさんよ。お前は任務終了だ。」

 リーパーはそう彼に言い残して持っていたペン―――そう、ペンツァーファウストを発射する。

 

 彼は見た。1本のペンから発射された小型の弾頭を。そして感じた。自分はユニオン・ジャックの元に死ぬのだと。しかし、彼は嬉しかった。何故なら、自分の愛した王室、いや、それ以前に紳士として死ねるから。

「カーラー。」

 彼の最後の言葉だった。彼が口にした女性はカーラー。誰かは分からないが、最後に口にした人なのだから、彼にとってはよほど大切な人なのだろう。


――ドンッ!!

 そして、彼はペンツァーファウストの爆発と共に木っ端みじんになった。

 床の所々には、彼を構成していた体の一部が散らばっている。あれはおそらく指。そしてあれは大腸であの白いのは骨だろう。肉が少し付いたままだ。

「おぉ、結構派手に飛んだな。」

 リーパーはほぼ全壊した彼の頭部をサッカーボールのように蹴った。

「おい!俺の獲物だぞ!何美談にしようとしてんだよ!!」

 シャドウがリーパーに向かって彼の骨を投げつけた。リーパーは華麗に避ける。

「隙を見せたお前が悪い。お前がさっさと殺さなかったのも悪いだろう。」

「うるせぇ!今ここで殺してやる!」

「お?言ったな。それなら俺もお前を全力で殺す。CAMが使えないのに俺にどうやって勝つんだ?」

「そんなモン使わなくたってお前なんか鬼影冷血でハンバーグにしてやるよ!!」

 シャドウはリーパーに中指を立てた。



 リーパーとシャドウは屋上へと続く階段を上り、屋上へでる鉄の扉を無理やりこじ開けた。

「やっと来たか!!」

もう既に別のルートから回収地点であるこのSIS本部ビルの屋上にライナー、マイケル、プライスがいた。

「すまない。MI6のエージェントを葬ってやった。」

「それはやったな。兄弟よ。」

 リーパーとプライスはハイタッチをした。

「おい、それよりシェラは?」

「もう呼んださ。でも、まだ来ないみたいだね。」

 どうやらシェラのヘリコプターはまだ来ないらしい。

「一応バラライカのヘリも呼んでおこう。」

 リーパーはバラライカのヘリに回収要請を送った。バラライカはあと3分程で着くそうだ。

 その時だった。

「やっほー!お待たせ!」

 遅れてシェラはやって来たのだった。しかし、何故か彼女はスーツに身を包んでおり、右手にはSIGP229を装備していた。

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