第18話 親愛なる死神様に。
シャドウブラッドはリーパーに任務の終了を告げた。
『何だよ、嬉しく無いのかよ~。』
シャドウブラッドは少し残念そうな感じでふてくされた。
「へーたいさん。何だって?」
サーシャがリーパーに不思議そうに聞く。
「皆聞いてくれ。俺はここでの任務は終わった。もうお別れだ。」
「そ、そうか、、、。それは良かったな、、、。」
皆は黙ってしまった。でも、ソコロフは反応してくれた。しかし、彼は残念ながら素直には喜べなかった。
『何感動の別れみたいになってんだよ。俺達は世間的にみたらただのテロリストなんだぜ。』
『うるせぇ。引っ込んでろ。』
『うぃー。でも、明日の朝に出発だからなー。』
シャドウブラッドが妨害をしてきたが日本語だった為、皆には通じてないようだ。
リーパーはシャドウブラッドを引っ込ませた。
「明日の朝にここを出発する。今日は最後の日だ。」
「じゃあ、とびきりおいしいごちそうを作ってあげるね!」
サーシャはリーパーに笑顔で親指を立てる。リーパーはそれに答える。
「あぁ、よろしく頼む。」
リーパーはサーシャの頭を撫でる。
「あと、あのお友達も呼んでね。皆でご飯を食べるともっとおいしいよ。」
「いや、あいつは居るだけで飯がマズくな、、、」
「リーパー。」
皆がリーパーを睨む。そんな圧力に耐えられなかったリーパーは、
「分かった。呼んでおく。」
ため息をついてオスプレイをノックする。
「俺のここでの最後の晩餐だ。お前も来いだそうだ。」
「マジ!?あの娘もいる?」
「お前はロリコンか。あいつが飯を作るんだよ。」
「Yes!そいつは行かねぇとバチが当たっちまうぜ。」
シャドウブラッドはオスプレイの中で大はしゃぎをした。
『シャドウブラッド。部隊はここを中心に独自に展開をします。』
シャドウブラッドのインターフェースに連れてきた部隊から連絡が入る。
「んな事はどうでも良いんだよ!!ロリの飯が食えれば!!」
シャドウブラッドは英語で八つ当たりをする。
『、、、、。』
味方は動揺して何も喋れない。
「こちらリーパー。了解だ。展開してくれ。」
『りょ、了解。』
味方との会話も出来ないシャドウブラッドに変わってリーパーが英語で返事をした。
「それじゃ、俺はあの娘と遊んでくるんで邪魔しないでね。」
シャドウブラッドはそう言ってオスプレイを飛び出した。
「イカれてやがる。」
リーパーは呆れながらオスプレイを後にした。
「あなた、英語喋れる?」
バラライカがシャドウブラッドに英語で話しかける。
「うん、喋れるよ。こんにちは。俺はシャドウブラッド。シャドウでもブラッドでも何でも良い。よろしく。」
シャドウは英語で喋る。
「私はバラライカ。よろしく。」
バラライカはシャドウと握手をする。
「そんな事よりあの娘は?一緒に遊びたいんだけど。」
「あ、あんたロリコン!?」
「いや、小さい女の子が好きなだけ。」
「それをロリコンって言うんじゃ!!」
シャドウは頭をポリポリとかく。
「そいつから離れろ。バカになるぞ。」
リーパーが二人に英語で話しかける。
「誰がバカだ!ロリコン!」
「「お前だよ」」
「ひぇー。ダブルコンボだ。怖い怖い。」
シャドウは耳を抑える。
「それよりリーパー。私も連れて行きなさい!!」
バラライカはリーパーに迫る。しかし、リーパーの答えは即答だった。
「無理だ。」
「どうして!?」
「危険すぎる。」
「私はこれでも軍人よ!?」
「ダメなモンはダメだ。」
「そんな、、、。」
リーパーは今にも泣きそうなバラライカに強固な態度を取った。しかし、その様子を見ていたシャドウはバラライカに近づく。
「あの、お嬢さん?」
「何よ、、。」
「俺で良ければ連れて行きますよ?」
「あんたには頼んでない!!」
「えぇー、そんな冷たい事言うなよー。俺が守るからさ。」
バラライカの記憶にその言葉が引っ掛かった。バラライカの部隊の隊長の言葉だった。
―――お前は死なせない。なぜかって?それは、俺が守るからだ。
もう、死んでしまった隊長の言葉。それを言ってくれたのは頭のおかしな1人の兵士だった。
「そ、、そんなに言うなら、、、。別に良いわよ!!」
バラライカは照れながらもそう言った。
『リーパー?』
シャドウは日本語でリーパーに話しかける。
『あぁ?』
『この娘ってツンデレってヤツ?』
『あぁ。そうだが。』
『それはそれで可愛いな。』
「もー!私に分からない様に日本語で喋らないで!!」
それを聞いたバラライカは顔を真っ赤にしてシャドウをポコポコと殴った。
『ははっ、こういうのも可愛いなぁ。』
『お前?ドMか?』
『いや。女の子にいじられるのが好きなだけ。』
『それをドMと言う。じゃあな。』
リーパーは邪魔しては悪いとその場を立ち去った。
「はい。どうぞ召し上がれ!」
『いただきます。』
皆でテーブルを囲んでサーシャの作った料理を食う。今日はボルシチとサラダ。そしてローストビーフだ。
「この飯で最後になるのか。」
リーパーはインターフェースを着けたまま、サーシャの料理を食べる。
「変なへーたいさんはそれ取らないの?」
「あぁ、外そうか。」
リーパーはインターフェースを外す。
「あっ!!あの時のお客さんだ!!」
サーシャはリーパーを指さして驚く。
「そうだ。あの時の客だ。」
「へー。知らなかったよ!」
サーシャはそう言ってシャドウに水を注ぐ。
『うひょー!!幼女が水を注いでくれたぜぇ!!サンクス!!』
「えへへ!何言ってるか分からないけどありがとう!」
サーシャはシャドウが何を言っているか分からなかったが、自分に感謝している事は分かった。
『気色悪い。』
『うるせぇ!!』
シャドウはリーパーにブーイングをした。
その夜は遅くまで部隊の皆と会食を楽しむのだった。
翌朝。ソコロフ達とリーパー達は食堂に集まった。
「世話になったな。」
リーパーはソコロフと握手を交わす。
「こっちの方が世話になった。そうだ!!ケレンスキー!!」
「どうした?」
「写真を撮ろう。皆!!集まれ!!」
『了解!!』
「分かった。」
皆はケレンスキーの前に集まった。ケレンスキーは持っていたカメラをセットし、タイマーを設定する。
「それじゃ、親愛なる死神に。チーズ!!」
『チーズ!!』
カメラは少し眩しいフラッシュを焚いてシャッターを切る。写真は皆が笑顔でとても良い写真だった。
「この写真を刷ってくるから待ってろ。」
「いいや、これでこっちに保存出来る。」
リーパーはケレンスキーのカメラを借りると端末のポートを挿してデータをリンクした。
「これで保存出来た。悪いな。」
「お安いごようさ。」
リーパーはケレンスキーにカメラを返す。
『リーパーさん。時間だぜ。』
『そうか。分かった。』
シャドウはリーパーに別れの時間だと伝える。
「俺はもう帰らなければならない。それじゃあな。」
「待て。皆でヘリを見送る。」
「最後まで悪いな。」
「いいや。世話になったからな。」
そう言ってリーパー達はヘリポートに向かった。
『それじゃあ、先に行く。』
『あぁ。分かった。』
先にシャドウとバラライカを乗せたオスプレイを見送る。
そして、2人を乗せたオスプレイは飛び立った。
『スパシーバ(ありがとう)!!ウクライナ人!!』
「皆!!さようなら!!」
ソコロフの部隊の皆は手を振った。
「今度は俺の番だ。」
リーパーは自身のヘリに乗る。プロペラは勢い良く回っていた。
「そうだ!!変なへーたいさん!!」
「おう!!どうした!!」
サーシャが最後に近づいてきた。
「また、会えるよね?」
「あぁ、きっと会えるさ。」
『リーパー。離陸します。その娘を離して。』
「分かった。離れてくれ。もう行かなくてはいけない。」
「うん。バイバイ!!」
「おう、またな。」
リーパーを乗せたヴェノムは離陸した。リーパーはポケットから何かを取り出して地上のサーシャに投げた。
「何か落ちてきた?」
サーシャはその紙を拾い上げて広げる。
「これは、、、」
リーパーからの最後のプレゼント。それはサーシャと両親が映った写真だった。
「ありがとう!!へーたいさん!!」
リーパーのヴェノムは青空の彼方へ消えてしまった。
彼はこれが終わりでは無い。数ある任務のうちの1つにしか過ぎないのだ。
彼にはまだまだたくさんの任務が待っている。
この数週間後。ストライク・ブラックから送られた特殊作戦部隊によってウクライナ内の親ロシア派は崩壊し、ウクライナに平和は戻った。しかし、親ロシア派のテロは後を絶たない。それでも、戦争は終わったのだ。
同じ頃、アフリカでは『アフリカ統一戦線』が結成され、アフリカ統一の動きが始まった。動いているのはウクライナだけでは無いのだ。
―――俺の戦いは終わらない。ストライク・ブラックの目標は世界征服による真の平和の実現だ。それが実現するまで俺は戦い続ける。
俺の居場所は戦場だ。
第一章 少女の唄編 終わり
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