第8話 新スキル確認 2
特異走行は壁ならステータス任せに、かなりの距離を走れたので無用かと思われた。
しかし真の利用法は歩かない事にあった。
3歩のみ歩ける。
歩かなければ壁でも天井でも、貼り付いたままを維持出来た。
当然頭に血は登るが、かなり有効なスキルなのは間違いなかった。
忍具は苦無や手裏剣、煙玉等の各種忍具を自由に作れた。
即効性の毒まで作れるのには驚いたが、賢明な判断で作ることはしなかった。
「忍具マジやっべー…」
「危ないね…」
「次は使役かー…ルナ。対象に出来そうな生き物に心当たりはあるか?」
「うん、あるよ!」
「そうか、じゃあ案内してくれ」
「ここ!」
ルナは元気よく手を挙げて返事をするも、2人以外は何もいない。
(まさか…)
「ルナ、どこにいても賢治様に呼び出されたい!」
賢治の頭脳は過去最高の高速回転で思考して、どうすればこの場を煙に巻いて使役の対象をルナから別の対象へ変更出来るか考え…
「ダメなの…?」
「そんな事ないさ、俺の最初の使役はルナだって決めてるからな」
答えを出す前に、泣きそうなルナの声に反射で返答していた。
「やったー!」
(俺にロリコン疑惑の噂が付きまとうのは諦めよう。使役)
賢治は自分の返答内容に気付くも、ルナを悲しませない事を第一として周囲から冷たい目で見られる事を諦めて受け入れた。
「あっ、賢治様の使役になれたー!」
ルナが抵抗しなかったため、天地ほども差があるステータスでも使役が出来た。
「よかったなルナ、これでずっと一緒だ」
「うん!」
抱き着いてきたルナの頭をしばらく、賢治は撫で続けていた。
「口寄せ、口寄せ、口寄せ、口寄せ、口寄せ、口寄せ、口寄せ」
大部屋の中を賢治は走り続けながら連続して口寄せを使い、ルナを召喚し続けている。
「ふぅー、口寄せの実験はこれくらいでいいか」
「はーい」
口寄せは賢治から半径5メートル以内の場所で障害物がなければ、そこを指定して使役対象…この場合はルナを自由に呼び出し可能な忍術だ。
場所の指定をしなければ召喚可能なら術者の正面に呼び出される。
(ルナの入浴中とかに口寄せする事になったら…あー、フェンリル形態で出てきてもらおう)
五行忍術は後で魔法と一緒に試すことにして、忍戦闘はルナと模擬戦をしてみた。
(体格もステータも変わって戦闘スキルも変わったから、こりゃ慣れるまでに時間がかかるな)
圧倒的よりも激しいステータスの差で、賢治の攻撃は1度も掠る事さえなく終了した。
忍戦闘の練習を早々に諦め、賢治は五行忍術と魔法の検証と練習に入った。
「火遁!」
ポッっと豆粒以下の火が指先に出て。
「火魔法!」
ポッっと火遁と同じ結果になり。
「水遁!」
「水魔法!」
チョロっとだけ水が出て。
「土遁!」
「地魔法!」
サラッっと乾燥した土が出て。
「金遁!」
コロッっと地面から何かの金属が出て。
「風魔法!」
フワッっと風が微かに吹き。
「木遁!」
ニョキっと何かの芽が出て。
「光魔法!」
ポッっと微かに光り消え。
「闇魔法!」
フッっと一瞬少しだけ暗くなった。
賢治は落ち込んだ。
「魔法は時間のある時にゆっくり練習していくよ」
「うん、その時はルナも手伝うね!」
「よろしくな」
立ち直った賢治は魔法の練習を未来の自分に投げて、ルナの頭を撫でて現実から目を背けていた。
「えーと確か次は…異世界転移だっ」
その瞬間、賢治の姿は消え。ルナだけがその場に取り残された。
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