第3話 初めての異世界
賢治に破壊されそうになったダンジョンコアは、行き先も決めすに転移を実行。
賢治の左手首の転移機能を持った腕輪と干渉して、異世界ディシェイドへと転移してしまった。
転移の途中で世界の壁を超える際に、接触していた賢治とダンジョンコアは。コアが賢治に吸収される形で融合。
不足し欠損している血液と脇腹を補うために、他の体細胞を使って補修。
身長が10センチ以上も縮み、見た目年齢も中学生程度まで若返っている。
服も靴もブカブカになり、背中の刀は腕の長さが足りずに抜く事すらかなわないだろう。
最大の特長は胴長フツメンだった体のバランスが整い。脚長イケメンになった。
最適化を成された賢治の肉体はこうして回復し、異世界の環境にも適応した。
地面に1枚の葉も落ちていない、摩訶不思議な森。
鳥の囀りもなく、高い木と鬱蒼と生茂る葉に遮られ光も届かずに暗い。
ほぼ常に微風が流れ葉を揺らし、周囲の音を掻き消している。
そんな森の奥深くに光の円形陣が現れ、次いで若返りイケメンになった賢治が現れた。
朦朧としていた意識は回復し、左脇腹の傷も不足していた血も元に戻っていた。
意識がはっきりしていて痛みもない事に驚き、急いで体を確認していく。
(えっ?俺、生きてる!?傷も痛みもない、貧血症状も感じない。それに何故か、服も靴もブカブカになっている)
歩きにくいからと靴紐をきつく結び直し。
(刀は…ある。防具はあるが、こっちもブカブカ。魔法袋はない。腿のナイフは左だけ残ってる)
探索前の装備や所持品の確認と同じ行程を行い、内心の動揺を落ち着けていく。
斥候スキルの探知系が反応しないので周囲に危険は迫ってないと、なるべく多くの情報を集めていく。
(忍野賢治22歳。彼女居ない歴イコール年齢、そして純潔チェリー…って、やかましいわ!!15歳から探索者を始め、20歳にして深級探索者へとスピード昇級。パーティーリーダーはダリアで、メンバーは俺、リンダそれと…マッケンジー)
親友と思っていた相手に騙されMSK…モンスターサーチャーキラーをされた事に怒りを覚えるが今は抑える。
(確実に死ぬ相手だった巨狼との戦闘で偶然勝利。瀕死の重症を負うもダンジョンコアを破壊しようとして…転移の光に包まれてからの記憶がない。ダンジョンコアも見当たらないし、現在地の見当もつかないな)
木に登って上から目印でも探すかと考え、上を見て周囲に首を巡らせると。
いつの間にかそこにいた黒い巨狼と目が合った。
(っ!!あいつだ間違いない。さっき殺したはずの深級ダンジョンのラスボスだった狼だ!あの表情と瞳、忘れるものか)
なぜ殺して魔石になったはずの相手が生き返ったのか。
なぜ隙きだらけだった自分を襲わずに見ていたのか。
疑問は尽きないが今はあの巨狼を刺激せずに、なんとかして逃げ切ろうと賢治は考えていた。
だが…
「マスター!!」
巨狼は少女の、いや幼女と言ってもいい声で吠えると。急激にその巨体を縮め大型犬サイズになると、賢治に飛びついて頬を舐め始めた。
元巨狼の狼に押し倒され馬乗りにされ、害意も殺気も感じないまま舐められ続ける。
急に怯えるのが馬鹿らしくなった賢治は、狼の背中を撫でつつ好きにさせていた。
通常?サイズになった黒狼が落ち着き、顔を舐めるのを終えたので声をかける。
「なあ、おい。落ち着いたんなら退いてくれ、話が出来るんなら話をしよう」
「ワン!」
犬の声ではなく幼女の声のまま返事をする黒狼が、賢治の体の上から横へと退く。
「色々混乱してて聞きたい事が沢山あるんだが、おま…君はなぜ俺をマスターと呼んだんだ?」
お前と言いそうになって、不興を買う訳にはと君と言い直す。
座り込む自分の目の前でお座りしてお利口にしているこの黒狼は、一瞬で自分を殺しうる存在なのだ。忘れてはならない。
例えそれが艷やかで柔らかそうな体毛が全力で、モフりにおいでと誘惑している様に見えてもだ!!
賢治の葛藤をよそに、黒狼はとてもマイペースの様だ。
「うん?だってフェンリル2世を生んだのは、貴方だからー!!」
忍野賢治14歳。
自分では22歳だと思っている若返りした少年は、自分でも知らぬ間にフェンリル2世を生んでいたらしい。
「ええーーーーーーーーーーーーーっ!!」
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