ボックス

@hisashi_kaoru

第1話

世界がざわついた。人々は空を眺め、空へ指差し、携帯を空へ向けた。その先には空を飲み込むほどの箱だった。

「「「この世界は、失敗作だ。」」」

「我は、銷魂した。」

「我は、失望した。」

「我は、絶望した。」

「「「よって、この世界を、変える。」」」

同時に箱が開き、光に人々が、世界が、飲み込まれた。

そんな中、声は続く。


「「「さあ、新たな世界を創れ。」」」


ざわつく駅のホーム、鳴り響くアナウンス。

『まもなく1番線、快速電車が通過します。黄色い線までお下りください。』

それと同時に通過する電車。

『続きまして、1番線各駅停車の電車が参ります。』

数分後に到着した電車に乗り込む。

帰宅時間と重なってか、電車内はぎゅうぎゅうだ。そんな電車に揺られて数駅。目的駅に到着し、人を避けながら降りる。改札を通り、いつもの帰り道へと足を進める。駅と違ったざわつき。人の会話、車の音、店の音楽。音に紛れながら歩く。その音を抜けて、家へ着く。

「ただいま。」

「お帰り、お兄ちゃん。ご飯できてるけどすぐ食べる?」

問いかけてきた妹の‘奏’。両親が居なくなってから二人で暮らしている。

「着替えてから食べるよ、用意しておいてくれる?」

「はーい、わかった!早く着替えてきてね、いつもすぐ来ないんだから!」

「あい、すぐ来るから」

そう言って、部屋へ行き制服から着替える。リビングへ行くとカウンターに置かれた料理の隣に封筒があった。

「‘榊原 律’様、僕宛なんて珍しいな。送り主は…書いてない?」

「すごい怪しいよね、開けるの怖くて!」

「いや、僕宛のを開けようとするなよ。」

封筒を開けると、案内状だった。

「…、何故。」

「え?なんだったの?」

覗き込もうとした奏から手紙を背中へ隠す。

「なんで隠すの!如何わしいやつの請求書なの!」

「何言ってんだ、そんな事あるわけないだろう。」

手紙を封筒へ戻し、ポケットへ押し込む。

「さあ、冷める前に食べよう。」

「ふーん…。」

疑いの目を向けながらもお互い席に着き食事を始める。

(何故、どこから漏れた…。漏れる場所は無いはず…。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る