白紙の改定

エリー.ファー

白紙の改定

 これを変えるってのは、どうなのかねぇ。

 うん。

 いやね。分かるよ、この法律が時代に合っていないってのは。

 でもさ。

 これを、世界に広めるほどかと言われたら、全然違うよね。

 うん。

 それは分かるでしょう。

 うん。

 だってね、見てごらんよ、ここ。

 完全にうちの国の文化的背景があってこそ理解できるわけでしょ。

これじゃあ、何にも分からない。他の国の人たちの質問に対応しきれないし、その良さを説明することも難しいよ。

 むしろ、そういうのを言葉にしないで捨てるというのもありなんだけど。

 そうなるとねぇ。

 自国の法律を持っていて、国際的な法律の中に組み込むっていう会議の趣旨とは大きく逸脱するわけじゃない。

これはねぇ、厄介なことだよ。

 どの国の議員も、批評家も困っているんじゃあないかなぁ。お互いの国の法律に対する理解を深めようとするのは分かるけどねぇ。むしろ、仕事は増えているだけじゃあないかって思っちゃうんだけど、違うのかな。

 思いつきなんじゃないの、この会だって。

 ねぇ。

 そんなもんでしょうよ。

 本来。

 だって、法律の理解を進めてなんなのかねぇ。その国の法律には、その国の文化が深く絡まっている訳だから、結局はその国生まれの人間が一番よく理解できるわけでしょ。知識を得たところで、そのままその国で活躍できるかっていったらそうでもないんだし。

 うちの国はいいけどさ。

 他の国なんて大変だよぉ。

 法律の変化が大きなところなんか、どうやったって、形にすること自体が難しいし。もしかしたら、提出した法律が提出後に微妙に変化しちゃったりしてねぇ。そしたらどうすんのかね。だって、法律が作られる過程でさえ、国によって違うんだから、起きるでしょう。それくらいのことは。

「どうされますか。このままでは、会議に我が国だけが案を出していない、ということになりますが。」

 とりあえず出すけど、うちの国ならではの革新的な法律とかは良そうよ。やっぱりさぁ、なんていうのかな、どこの国でも当たり前に施行されているくらいがちょうどいいんじゃないのかな。

 ね。

「だとすると、殺人罪とか、ですか。」

 法律を主題に置いてはいるけど、そこは、ほら、最終的には殺人云々みたいな感じに持っていって、道徳とかにシフトさせればどうにかなるでしょ。

 法律に心は必要か、みたいな議論って全然センスないけど注目しなければいけないような内容だし。

 そういう方向に振っていく感じで良いよねぇ。

「そうですね、期間的にもそう考えた方が妥当かと。」

 ISENUはどうなの。

「そちらは間違いなく。一応、戦争の準備は着々とできています。」

 こんなことしている間にも、参加国同士の戦争が始まろうとしているなんて、みんな、理解できているんだろうけどねぇ。でも、まぁ、止められないしね。

「分かります。とても難しいことです。」

 戦争のための法律は出来上がってるのかなぁ。あっちは別の部署だからさぁ。なんていうか、嫌いなんだよね、あの、血の気の多い感じがさ。

 必要なんだろうけどなぁ。

「戦争がお嫌いですか。」

 業務が増えるからぁ。

「業務が増えるから戦争が嫌いなのであって、別に戦争自体は嫌いではないと。」

 大臣がこんなことを言ってはいけないかなぁ。

「いいえ、そんなことはありません。」

 どうしたの、なんだか笑顔みたいだけども。

「残り十秒もしないうちに起きるクーデターのための準備は整ったな、と。」

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