第12話 星からの監視者
忍冬の花が白い蛇の抜け殻のように咲く初夏の心地よい夜、普州の若い、領主を持たぬ武官は、若い森の外れでヒトとは異なる由来を持つ者と会った。約束の刻限よりやや早く、約束のところまで行った武官は、野に寝そべって星の数を数えた。
用心深い武官が気づかぬうちに忍び寄った者は、武官よりやや小さい女子型未成熟体で、闇の中では金の髪と銀の瞳、薄紅色の肌を持ち、自らを「監視者」と名乗った。
監視者は次のように言った。空の星のうち、自分の髪・瞳・肌と同じ色の星はまことの星ではなく、この世界を遠くから監視するために作られた星である、と。
監視者はいくつかの星を指差し、武官がそれらをしばらく見ていると、たしかに動きがわずかに異なっている。
武官は尋ねた。するとお前は、あれらの星が作って送って来た者で、お前とその星は神のような誰かあるいは何かによって作られた者なのか、と。
監視者は薄い闇の中でも、苦笑いのようにも見える顔を武官に向けて言った。
わたしたちは、あなたたちほどにせものなわけではない。
それから長い間、ふたりは一緒に旅を続け、八州のあちらこちらで妖異と出会った。監視者によれば、妖異とは違う物語の中で語られた異物だそうだ。そしてふたりは、ともに浄化を恐れぬ身なので、その妖異を楽しんだ。
星崎の闇を見よとや啼く千鳥 芭蕉
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