この世界は僕らを知らない

日常言葉

プロローグ

この世界に、私はいない。

人々は私のことを気に留めない。

いや、気づいてもいない。

帰る場所など、もう無いのだと分かっているのに。まだ私はーー


人知れずついた溜息は、文字通り誰にも知られずに、私を知らないこの世界へ消えて。

そう。知らないのだ。

この世界の誰一人として、私のことを知らない。忘れていることもーー知らない。

それでも、私は。

私は、この世界に存在している。

けれど、どんなに声を張り上げようとも、この声は、届かない。

でも。それでも。

私は、この世界にいるのだ、と。

私の心は、ずっと叫んでいた。

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