インターミッションⅡ

~ザイ~

 ここは絶景だ。


 三百六十度。全てに視界が広がっている。遮蔽物などなく、ただただ広がる空間。


 一体どれほどの広さがあるのだろう。最果てはあるのだろうか。


 それらの疑問は愚問である。悠久の時間、この空間を流離ってきたのだから、考えるのも無駄であることは重々承知している。


 この空間は、絶えず膨張している。そう。まるで宇宙のように。


 ただ、宇宙と異なるのは、恒星、惑星、隕石、スペースデブリなどがないこと。その代わりに存在するのは、あるとあらゆる物語。


 『那由多の世界群』


 那由多会などはそう呼んでいるらしい。私も便宜上、そう呼んでいる。


 私の右手から映像が流れてくる。


 これはどこの世界だろうか。映像を見る限りでは、あまり興味をひくものではなかった。私は、その映像を奥に押しやる。


 今度は左から、上から、下から。いくつもの映像が私の前を通過していく。その中には興味深いものもあったが、今はそれらに関わっている暇はない。


 さて。


 私は、今一番興味深い映像を手元に引き寄せる。


 ニッタシュンスケ。


 彼の世界と、彼が紡ぎ出す物語。その二つが融合していく様は、まことに興味深い。


 彼は、この物語をどうするつもりなのだろうか。


 創界の言霊をどのように使うつもりなのだろうか。


 まこと、興味が尽きない。


 私は、その映像に手元に留めた。今しばらく、静観することにしよう。


 いずれ……そう、いずれ彼はこの世界のことも、私のことも知ることになる。


 その時は、私を認め、仲間となってくれるだろうか。


 いや、仲間になるはずだ。そうでなければならないのだ。


 私の名前はザイ。


 那由多の世界群の中で悠久の生命を刻む存在。

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