第24話「解釈」
有名財閥の女社長が乗っていたリムジンが突如破壊されたという報道は瞬く間に広がった。四人はリリィの手配したランエボに乗り込み、ジャスの運転でまたどこかへ向け走り出す。事件現場では今、リリィの影武者が警察と話し合いをしているらしい。
「今日の夕刊の一面はリリィのものデスね! とはいえ、あの鉄塊をどう処分しまショウ」
「愛車って言ってなかったか、あれ」
「よく分からない妖怪です」
アマテラスとハルは揃って訝しげな表情を浮かべた。ジャスがまあまあと一度声をかけ、改めて話し始めた。
「ここ十数年で人々の目に妖怪が映るようになり、警察や自衛隊はピリピリしている状況デス。あまり派手に騒動を起こされるのは困りマス」
「相手から向かってきたんだ、私は仕事をしただけだよ。ひかりの身体が殺されちゃたまらないからな」
「ふむ……。では目立たない場所へ潜伏しまショウか、シスターも隠れ家は準備しているようデスし」
「
さっき羅刹魔へ使っていた術のことだろう。彼女はあれを人心掌握術と言っていたが、もっと何か違うもののようにアマテラスは感じていた。
「しかし妖怪が世間の目に留まり、ワタシ達の存在が夢物語でないことが理解されてきたのはいいのデスが」
ジャスがため息をついた。
「妖怪は排斥すべきモノ、という姿勢が気に入りマセン。近頃では特異点付近に暮らす人間の中にも、ワタシ達に近い者が生まれ始め、迫害にあっているそうデスよ」
「子供タチをいじめるなんて許せないデスね。ヒトは理解不能デース」
「人間からしたらそりゃ、自分の手の中にないものは驚異的で訳の分からない物体だろうな。人間の解釈は妖怪も力を持って産まれた子供達も大差ないわけだ」
アマテラスはひかりのことを思い返す。彼女も人間の中では生まれつき、妖怪の類に触れ抵抗できる部類だ。神託で学校を突然やめさせられた彼女のことを、周りの人々はどう思っていただろう。不思議な子扱いだけで済めばいいが、もし死屍子の封印が終わり帰った時に居場所がなかったら? ひかりは普通の暮らしがしたいと言っていた。人間社会のひとかけらでありたいと思っている。そこから引きずり出したのはアマテラスだ。
「排他的な生き物なんですね、人間というものは」
「異質なものを消し去るのが得意芸さ。とある日の夕方までは仲のよかった隣人の子だとしても、その夜にはもう街を出ていけと喚き立てる」
ハルが目を伏せた。遠いあの日の夜を思い出している。
「私はせいぜい、ひかりの周りの解釈だけは崩さないように立ち回るさ。大事になってひかりが世間から叩かれる、なんてことにはさせない。帰る場所は守ってやらなきゃ」
自分と同じ目に遭わせまいとする、確固たる意志だった。
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