協力者

第21話「本心の片鱗」

 眠り込んでいるひかりをジッと見下ろしながら、薄く開けたカーテンに意識を集中させる。あそこから朝日が見えた瞬間に、アマテラスはひかりの中へ入るはずだ。夜が更けてくると力を失うのか、あの二人がいなくなってからアマテラスは現れなかった。あの二人とはもちろん、桃色の髪をした彼らのことだ。

「ジャス、リリィ……」

 髪色と整った顔立ちからして、兄弟だろうか。どちらが上かは分からないし、双子かもしれないがその可能性はあるだろう。いつジャスとリリィが迎えに来るかも分からない。早くこのことを話したかった。

 眠っているその顔へ光が差し込む。

「うわッ⁉︎」

 寝息を立てているひかりの枕元へ光の輪郭でアマテラスの姿が浮かび上がった。実体がないらしく向こうの照明が胸元に透けている。フッとひかりに覆いかぶさると、その姿は消えた。

「……あまりジロジロと見ないでいただけますか」

「悪いな、つい。アンタに話したいことがあって、昨日いなかったみたいだから」

 ハルが昨日の出来事を語ってやると、アマテラスは渋い顔をした。ペンダントについて問いかけると重たい口を開いて話し始める。

「天明伝絵巻物に描かれている勾玉の装飾具のことでしょう。それが祠を封じるための鍵の一つです。ですが……」

 これは妖怪などに知られたくなかった、と冷たい視線を向け、アマテラスが告げた。

「あかりが持ち去ってしまったのです。装飾具がなければ死屍子は封印できませんので、わたしはあかりを捜したかったのです」

「ただ巫女の力が必要なだけ、ではなかったんだな」

「妖怪相手に知られると面倒なので黙っていましたが、仕方ないことです」

 ふいと外へ歩き去ってしまったアマテラスへどこに行くのかと訊くこともできず、ハルは立ちすくんでいた。自分がここまで信用されていないとは思っていなかったのだ。

「私は別に、死屍子とか国のことだとか、心底どうでもいいんだけどなぁ。母さんさえ……あの人と一緒に暮らせれば、それで」

 ひかりの声や仕草が脳裏に浮かんで、ぐっと握りつぶすように意識を他へ逸らした。アマテラスは寝間着のまま外に出たが、大丈夫だろうかと考えていると、扉が勢いよく開いた。

「着替えか。そこにあるぞ」

「分かってます」

 アマテラスが脱衣所へ入っていった時、同時に扉をノックする音がした。気配は人間だが、扉に近づくと嗅いだことのある匂いがする。

「……おはよう」

「おはようございます、お客様。ご友人と名乗るお方がお待ちです」

 小柄なベルボーイがこちらを見上げ、うっすらと笑ってみせた。

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