USO

床町宇梨穂

USO

彼女が嘘をついている。

その時僕はとても緊張した。

自分の回りの空気が緊迫しているのが肌を通して伝わってくる。

彼女の瞳を見つめているつもりだが、自分の目にはもっと遠くの方が写っていた。

僕だって嘘ぐらいつく。

そして、ほとんどの場合は罪悪感を伴なっている。

嘘をつくのがいい事じゃない事ぐらい知っている。

しかし、僕の嘘は、相手を緊張させたりなどはしない。

そう、その時僕は冷や汗が出るほど緊張していた。

人に嘘をつかれる事なんて普通に生活していればよくある話だ。

だから、たいしたことじゃない。

彼女に嘘をつかれて落胆している訳じゃない。

僕がその嘘に気付いている事を彼女に悟られてはいけないのだ。

嘘をつかれる事よりもつらい事。

それはそれが嘘だと言う事に気付いても責める事ができない場合だ。

今彼女にそれを指摘してしまったら彼女はまた別の嘘を僕につかなければならない。

次に彼女が言うと思われる嘘だって僕には分かっている。

だから僕はなにも言えないで彼女の話を聞いている。

結局言いたいことは何も言えない。

嘘は人を無口にさせる。

彼女が嘘をつけばつくほど僕の口は貝のように固まってしまう。

そして僕の心も古い井戸のように閉ざされてしまう。

しかし僕は彼女の嘘に騙されてあげなければならない。

そうしなければ二人の関係は終わってしまうから・・・。

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USO 床町宇梨穂 @tokomachiuriho

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