主人公Lv.0の俺がなぜこのクラスなのだろうか【Re】

プル・メープル

プロローグ 最弱の主人公

 異能力とは、過去に日本が行った宇宙探査計画の際に手に入った高粒子体のエネルギー暴走による大爆発によって、全世界に広まった一種の障害とも呼べるものだ。

 初めて異能力者が発見された時には、宇宙人だの反逆者だのと言って、異能力者は大変な目にあったらしいが、勇敢な異能力者達によってその争いは鎮められ、今となっては社会にも受け入れられ、当たり前の存在となっている。

 現在、日本人口のうち約2%が異能力者である、もしくはその素質があると言われている(首都新聞参照)。

 だが、異能力者の存在が認められたからと言って、それによって事件が起きない訳では無い。

 過去にも、高校生の異能力者が肩を強く叩かれた弾みに力が暴走して、肩を叩いた人間が傷つけられるという事件があった。

 肩を叩いた人間は異能力者ではなかったため、かなりのダメージを受けたらしい。

 そんな時、怪我をした本人やその家族は決まってこう言う。

『異能力者は危険だ』と。

 異能力者自身がいくら気をつけていても、その周りの環境が彼らに衝撃を与えるなどすれば、未熟な異能力者達の持つ力は、簡単に暴走してしまう。

 そんな事件は他にも沢山ある。

 故意ではない事件で1番大きなものといえば、昔はポルターガイストなどとも呼ばれ恐れられていた力『サイコキネシス』の使い手が、大きなストレスを感じて体育館をまるごと破壊したというものもあった。

 彼もまた、未熟な高校生だった。


 そんな事件が多くなり、それを見かねた当時の総理大臣はこんな内容の法案を提出した。

『異者完全別学法』

 その内容は以下の通りだ。

 異能力を持つ者は、その内容によらず、全員国の用意した異能力者専用の学校に入学してもらう。

 これは、異能力を持たない人々への危険を、少しでも減らすための法だ。

 異能力者達は、専用の学校で異能力の向上を学ぶと共に、その制御の方法も学ぶ。

 そうすることで、社会へ出てからの異能力の制御が出来るようになり、異能力者ではない人々と、なんの隔たりもなく共に生活できるようになる。


 この法案は国会ですんなりと受け入れられ、その年に施行された。

 今となっては異能力者専用の学校は全国に存在しているが、その中でも佐藤 一郎の通う清陵高校は、異能力者専用の高校として一番初めに建てられたということで有名だ。

 そして、彼の学校にはもうひとつの特徴がある。

 それが『主人公クラス制度』だ。

 異能力者の中でも、容姿端麗だったり身体能力が異常に高かったり、異能力の質が高かったりする人がいる。

 そんな人達はみんな国を通じて学校側から主人公クラスに入るように言われる。

 彼らを主人公クラスに入れ、さらに自分の異能力に磨きをかけ、まるでアニメや漫画の主人公のように輝ける人間にする。

 そして、社会へ出てからリーダーシップを取れる存在に育てる。

 そういう目的で作られた制度なのだ。

 佐藤一郎もまた、主人公クラスの1人だった。

 だが、彼には何故自分が主人公クラスなのかが理解できなかった。

 主人公クラスに入るためには、先程あげた条件の他に、もう1つ条件がある。

 それが『主人公Lvを獲得していること』なのだ。

 主人公Lvとは国の機関である異能省による定期検査で、一定以上の結果が認められた場合のみに与えられる称号のようなもので、基本的には異能力レベルと同じ値を示すことが多い。

 そして佐藤一郎の持つ異能『オールコンプリート』、通称オルコンは全属性の異能力を使えるにも関わらず、その威力は極めて低い。

 そのため、異能力レベルは0と判断された。

 なのに、彼は主人公Lvを獲得している。

 世界で唯一の『主人公Lv.0』として。


 そんな彼は今日、新しい学年を迎える。

 新たな環境で繰り広げられる異能力者たちの日常。

 これは、事実上最弱の主人公の物語である。

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