スパイシー・シュガーのカーティス日記

高里奏

葡萄月十三日

 今日は図書館に新しい本が入ったの。カーティスの好きな植物の専門書や野鳥に関する本を沢山入れて欲しいと司書に頼んでおいたから、きっと明日にはお兄様からカーティスに伝わって、またカーティスが図書館に通ってくれるようになると思うわ。

 お兄様ったらずるいの。自分ばっかりカーティスと過ごして私を誘ってなんてくれないんだから。だけどいいの。今日は廊下で会ったカーティスにドレスを褒めて貰えたのだもの。季節に合わせて赤葡萄酒色のドレスにしたら似合ってるって言って貰えたわ。カーティスはお兄様と違ってとっても優しいの。穏やかな笑みがとっても素敵で、いつも落ち着いた温かな声がいつまでも耳に残るわ。

 だけどお茶会に招いてもちっとも参加してくれないのはきっと私との関係を秘密にしたいからね。身分差の恋は辛いわ。

 お父様はそろそろ婚約者を決めなさいと毎日口うるさいけれど、私にはカーティスという心に決めた人が居るのだからそんなものは必要ないって言ってしまいたいけれど、カーティスが私との関係を秘密にしたいというのなら、そうするべきよね。山のように届いた見合い相手の肖像画をどうやって処分するかに頭を悩ませることになってしまったけれど、カーティスのためならそのくらい苦にならないわ。

 そろそろ次の夜会のドレスを考えなくてはいけないわ。カーティスの好みに合うといいのだけれど、私はどちらかというと幼く見えてしまうから、彼と並んでも映えるように少し大人っぽいデザインの方が良いと思うの。そうそう、彼は青いドレスが好きみたい。ドレスに合わせて新しく宝石も用意しようかしら。お父様が新しい職人を紹介してくれると約束してくれたもの。きっと素敵なものが手に入るわ。

 問題はお兄様ね。どういうわけか最近お兄様はカーティスにべったりだもの。お兄様が邪魔でカーティスと踊れないなんてことがあったら悲しいわ。確かにカーティスはお兄様のお友達だけど、それにしてもべったりしすぎよ。しかも見せつけるように「僕のカート」なんて呼んで。カーティスは私のカーティスなんだから。

 絶対お兄様に負けないように完璧な装いでカーティスを誘惑するの。今度こそ、正式にプロポーズしてもらうんだから。

 そうよ。いつもは私ばっかり想いを伝えているけれど、やっぱりプロポーズはカーティスからしてくれなきゃ。

 勿論私だって毎日カーティスを愛してるってちゃんと伝えてるわ。私はいつでもカーティスのお嫁さんになってあげるってアピールもしているけれど、カーティスったらとってもシャイなのよね。そんなところも素敵なんだけど、やっぱり私の身分を考えると勇気が出ないのかしら?

 でも、身分なんて関係ないわ。愛があればなんとでもなるの。

 世界で私が一番カーティスを愛しているわ。カーティス、あなたもそうでしょう?

 はやくこの秘密の関係を終わらせたいけれど、二人きりの秘密の関係をもう少し続けるのも悪くない気がするの。これっておかしなことかしら?

 あなたも同じ気持ち?

 だったら問題ないわね。

 愛しているわ、カーティス。前世も来世もずっとあなたと一緒よ。


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