03話 闇魔法取得!そして別れの時
修行を始めて1年が過ぎた。
「よし。30分経った。消してよいぞ」
俺は集中して、身体の内側から黒い炎を消していく。
師匠言わく身体が闇を覚えたらしい。さっぱり意味が分からない。
「あちちちち。これで、俺は闇魔法を使えるようになったのですか?」
「使えると言っても、ダァァクダァァーックだけじゃがな」
「消し方は、何度もくらう内に感覚として分かったんですけど、出し方が分からないのですが」
「やる事は同じじゃ。黒い炎は消して消えん。主が消せたのは、主が黒い炎を出し相殺させたからじゃ」
「つまり、俺はもう闇魔法を使っていたと?」
「ダァァクダァァーックじゃ」
「よぉし⋯⋯」
立ち上がり、さっき身体の炎を消した感覚を掌でやってみる。
━━集中、集中
「はっ!!!!」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯?
「お師匠! ででで出ません!!」
「? 何をやっておる。ダァァクダァァーック!!!!って言わんと」
「え⋯⋯それ必須だったんですか?」
「当たり前じゃ!! 闇魔法を何じゃと思っとる!?」
━━原理は分からんけど、何かすげー強い魔法
「ちなみに何故必要なのですか? 普通の魔法にも、必要な事なんですか?」
「そっちの方がかっこいいからに決まっておるじゃろう。普通は、頭の中で念じるだけで出るぞ? だが、闇魔法は闇じゃからな。攻撃する際に出す時は、わしがつけた名を大きな声に出して言わねば発動せん誓約をかけた。ちなみに、言い方もわしのように言わんと駄目じゃぞ。闇じゃからな」
━━もうヤダこの人⋯⋯
「⋯⋯ダァァクダァァーック!」
恥を忍んで師匠がつけた名を叫ぶと、掌から黒い炎の玉が飛び出した。
「でっ出た!!」
━━確か、師匠は自由に操作して俺を追いかけ回してたな⋯⋯
自分にも出来るだろうかと考え、掌に意識を集中させてみると、自分の思い通りに動かす事ができた。
「おおおー!!!! 客観的に見ると、やはり凄まじいかっこよさじゃの!!」
かざしていた掌を閉じると炎も消えた。
「お師匠! 名前は変えられないのですか?」
「ん?作り主であるわしなら変えられるぞ」
「ちっ俺じゃ変えられないのか⋯⋯。あの、黒炎玉というのはどうでしょう? まだマシ⋯⋯いえ、更にかっこいいかと!」
「コクエンギョクゥ~? ださすぎじゃ! 却下! 主はセンスないのぅ」
━━ぐぬぬぬぬぬ
「ではさっそく次の闇魔法の修行を始めるかの!」
「ちなみに、闇魔法は全部でいくつあるんです?」
「んー召喚魔法は、主には使えんじゃろうし、用途も無いじゃろうからのぅ」
━━あれも闇魔法だったんだ⋯⋯。というか、彼女が作った魔法は全て闇魔法って事に本人がするのかもしれない。
「くらって耐えられんのは教えれぬしな。主に教えるのは、ダァァクダァァーックを入れて3つになるの」
つまり残り2つ。最初の1つを取得するのに、1年もかかってしまった。
ユリアンロッドは2年だと言っていたが、あと1年で俺は残り2つを取得できるのだろうか━━
「あ、そうだお師匠。闇魔法もいいですが、もっと簡単な魔法を先に教えて下さいよ」
「え? わし闇魔法しか教えぬぞ?」
「何故!?」
「何でそんなつまらぬ魔法を、わしがわざわざ教えねばならぬのだ。くそ面白くもない! そんなもの、ここを去ったあと魔法学校にでも行って学べばよかろう」
「俺はあなたの愛弟子でしょう!?」
「ええい! だから主には、かっちょいい闇魔法を教えてやっとるではないか! 他の魔法など知らん!」
「でも闇魔法は燃費悪いし⋯⋯」
━━そりゃ、師匠くらい無限かと思える程の魔力量があれば、問題無いんだろうけどさー
それに名前が⋯⋯。できればあまり人前で使いたくない。
「さぁ! 早く次の闇魔法の修行を始めるぞ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、また1年が経った
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
「よくやったの⋯⋯。これで終わりじゃ。炎魔法、ファイアの強化であるダァァクダァァーック。氷魔法、フリーズの強化であるダァァクバインドゥ。雷魔法、サンダーの強化であるダァァクプリッズゥゥン。よくぞ取得した」
俺はようやく3つの闇魔法を取得した。どれも強力で名前がださい、頼りになる魔法達だ。
「主は15。森を出て学校に通い、己の人生を歩むがよい。近くにヴァルキアという都市があり、寮付きの魔法学校がある。珍しい男の魔法使いに加え、主の闇魔法を見せれば、無料で入れるじゃろう。もし駄目ならば、またここに戻って来ればよい」
「お師匠。俺、お師匠には本当に感謝しています。2度目の人生をもらい、この世界で生き抜く力をもらい、これからの道をも指し示してもらいました。長い間⋯⋯有り難うございました!!」
2年分の思いを込めて俺が頭を下げると、ユリアンロッドは初めて、頭に被っていたフードを取った。
「角が⋯⋯」
「実はの、わしは魔族じゃ。無き魔王の右腕ユリアンロッド。他種族を滅ぼし始めた王と魔族に嫌気が差し、魔王軍を抜け、1人転々としながら暮らしておった。他種族は魔族を嫌悪しており話すらできん。じゃが、1人はなかなか寂しくてのう⋯⋯。違う世界である主をこちらに呼んでしまったのじゃ。」
ユリアンロッドの蒼い瞳から、1粒の涙が流れる。
「お師匠⋯⋯。俺また会いに来ます! 必ず」
「その時、わしがまだここにおるとは限らんぞ⋯⋯? 見つかれば移動せねばならぬ」
「いなくても何度も来ます。そうなっても、いつかまたここに戻って来て下さい。魔族だろうが何だろうが、お師匠はずっと俺の師匠です!!」
そう、魔族がどれだけ憎まれた存在てあろうと関係ない。俺はユリアンロッドを尊敬し、感謝し、そして大好きだった。
「馬鹿もの⋯⋯。主と過ごした時間は誠に楽しかったぞ⋯⋯。さー! はよぅゆけ! 今度は⋯⋯死ぬなよ」
「はい!!!!」
俺は敬愛する師に大きく手を振りながら、森の出口に向かって走り出す。途中何度か振り返ると、彼女もずっと手を振ってくれていた。
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