🧀 ポールと美味しい生活 🍰

つかさげんご : 師 厳吾

第1話 ─ 「秋葉の美味しいチーズ屋さん」




「ちょっ!ちょっと危ないじゃろう!筒兎ツツウサギ!!」

 

 「ああっ!だって将軍様!!ここのカウンターセマいんですもの!!」

 

 ここは、秋葉原蔵前通り、チーズ専門店。筒兎ツツウサギと呼ばれたホウは、可愛らしいメイド衣装の娘。


 片や、将軍様と呼ばれた方は、小学生くらいでしょうか、金色の髪が綺麗キレイな少年です。

 

 「の皿から、チーズが落ちたら

 どうするんじゃよ」

 

 少年とは思えない口調。

 

 「将軍様も、ボ~としてるからですよ!少し

 は、お店、手伝って下さいよっ!!」


 メイド娘が、ホホフクらましながら言い返すと、

 

 「ナヌ!家は、レッキとした、貴族の出身なんじゃぞ!労働なんぞ、プライドが許さんわいっ!!」

 

 「もうそんな悠長ユウチョウな事は、言ってられませんよう!将軍さまぁ… 」

 

 悲しそうに娘がウツムく。


「クゥ~!! 元はと言えば、あのっくき宿敵、に敗北してからと言うもの、今日コンニチの様に、労働をツネとしなければならない身分に、落ちぶれたのじゃぁ…」

 

 「でも、将軍様…。もはやこれまで!という最期の瞬間、残された魔力で転生して、命は助かったのですから、良かったじゃないですかぁ」

 

 娘が、ショウケースの中に美味オイしそうな、マスカルポーネチーズを並べる。

 

 「それは、そうじゃがなぁ…。悪魔界最強の将軍メフィスト様であるワシがじゃぞ、最後の魔力で転生してみれば、最弱悪魔!!デビル・チーズじゃぞ!デビル・チーズ!!」

 

 「将軍様!!そんな、ベタで恥ずかしいネーミングも言わなくても、聞こえてますよう!!」


 娘が鬱陶ウットウしそうにサエギる。 


 「それどころか、あの車椅子の娘に、再びカタキを討ちようにも、今のワシの様に戦闘魔力0では…」

 

 「まぁ…。確かに、あの車椅子の娘!!ムチャクチャ、強かったですからねぇ…」

 

 「じゃろう…? あの娘の方が、よっぽどバケモノじゃったよ!!」

 

 思い出したのか、少年が身震いする。

 

 「それでも、ワタクシは、この様に将軍様が生きておいでで、秋葉原チーズ専門店に、御仕オツカえ出来る事が、何よりもの幸せなんです」

 

 「おお泣かせるのう筒兎ツツウサギ…。お前だけじぁ!!今のワシにシタガい、付きソってくれるのわぁ!!」

 

 娘と少年は、お互い抱き合い、オロオロと涙を流す。





「オイオイ!ナニいつまでも陰気インキ臭ぇこといってんだよ!お二人さんよう!!」

 

 店のスミに、無垢ムクな表情を浮かべた童子ドウジタタズんでいる。

 

 「わわわっ!びっくりさせんでくれ!座敷ザシキわらし!! いつから、そこにおったんじゃぁ!?」

 

 「さっきから、ズッと居るよ!!

 まぁモットも、気付かれないように気配を消すのが、あたいの魔力だけどさ」

 

 「ふうぃ~。びっくりして、ワシの左手皿から、を落としかけたぞ!

 このチーズを床に落としたら、その場で命を失うんじゃぁ!!デビル・チーズが悪魔界最弱と呼ばれる所以ユエンは、この特異性に有る事は、お前も存じておるじゃろう!!」

 

 「いやいや、ワリィ、ワリィ。オドかすつもりは無かったんだ!

 まぁ…おびと言っちゃぁ何だけどさぁ、今日、あたいは、ちょっとしたが有って来たんだ!!」


 悪そうに頭をきながらも、ちょっとハズずかしそうに申し出た彼女の様子に、少年が興味を持つ。 


 


 ホホゥ提案とは、何じゃ!?


 なるほどぉ…。


 昨今サッコンの流行りに便乗ビンジョウして、タピオカドリンクを当店でも販売してみてはどうか?とな…


 それも、今までには無い、冷え冷え、濃厚ノウコウタピオカシェイクをかっ!!


 ナニナニ…


 まず当店、ご自慢の、マスカルポーネチーズをタップリと新鮮生クリームに合わし、次に、ロイヤルミルクティーを香り付けに…


 フムそれから?


 タピオカは、虹色に七色 ソロえて投入。


 オオッ!?


 これは、誰にも言っては成らぬのか!!秘伝の隠し味じゃと!!


 それは何じゃぞ!!



 味噌ミソ!!今、味噌と言ったのか?



 なっなんと…


 極少量の味噌を入れる事で、重厚ジュウコウかつ奥行きの有る風味になるんじゃな!!そこに、細かい空気を入れながら撹拌カクハンし、程よく冷凍…。


 続いて、シェイク状にナメらかに成った所へ、細かく粒にまで砕いた氷を加え、タピオカのプルと氷のシャリッで、食感にアクセントを演出する。


 そして最後に上から、ココアパウダーをけて、ティラミス風に…。


 なんと素晴らしぞ!座敷わらし!

 一流のフードプロデューサーではないか!?


 ナニ?普段からの、オヌシの美食探訪ビショクタンボウコウソウしたと…。


 いやそれは…


 オヌシの場合は、無断で好きな店に入りこんで、勝手にをする行為の事じゃろう……。

 



 「ウム!ともあれ!!座敷わらしの提案は、有難く頂戴チョウダイする!!

 新商品の試作期間は1週間。

 かつ、平行して店内改装工事も行うぞ!!

 筒兎ツツウサギ!!秋葉 界隈カイワイの魔物を至急総動員じゃ!!」




 そこから、半日も経たない内に悪魔将軍滅亡を知らない魔物達が、メフィスト本人からの伝令であると信じ大勢、店に集まった。


「メフィスト様に、皆の献身ケンシン的な働き、伝えておくぞ!!」

 と、少年が魔物達へゲキを飛ばす。


 改装工事中の店内では、妖精数匹がパタパタと羽ばたきながら、天井にチョコンチョコンと、ペンキをっている。


 妖怪アカナメが、壁の漆喰シックイをペタペタと、長い舌で上手ジョウズにスイスイ重ねていく。


 床にデンと構えたイカの怪物クラーケン。7つの手足を器用に使い、トンテンカラリと、カナヅチを鳴らす。


 所狭トコロセマし!と、切れ味抜群、得意のカマをり上げた妖怪カマイタチ!!スッパ、スッパと木材を切り分ける。


 その他、大勢の魔物達も、各自、担当の作業を仲良く分担し、あれよあれよと順調に工事は進んで行った。




 一週間後、店が再開すると、冷え冷えプルッシャリッ食感!!それでいて、濃厚チーズの風味が、たまらないタピオカシェイクは、若い、御客オキャクさん達の口コミと成り、連日、行列が出来るほど大繁盛であった。


 反して、大損害をコウムったのは、蔵前通クラマエドオりを挟んだ差し向かいの、狸山タヌヤマ商会・タピオカドリンク店である。


 愛らしい店員メイドちゃんに化けた、3匹のオス子狸コダヌキは、


「至急!!!アニキに連絡だ!!どんな手を使っても、あのチーズ屋をブッ潰さないと!!」


 こちらは、少々、危険な雰囲気フンイキ




筒兎ツツウサギ!!過去、悪魔将軍メフィストの魔力を持ってしても、人間ドモの、タマシイ奴隷化ドレイカは不可能じゃった…。

 しかし現在、戦闘魔力0最弱の悪魔に転生してしまったワシが、これからの日本、いや世界中の人々を、美味しいチーズで魅惑ミワクし、心の底から悪魔のトリコにしてみせるぞ!!


 続けいっ!!筒兎ツツウサギ!!


 新しい悪魔界の幕明けじゃぁぞう!!!」




 

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