チカン・ジャッジマン

矢魂

チカン・ジャッジマン

 ほんの少し未来のお話。世の人々はとどまることを知らない痴漢被害と、それに伴って増え続ける冤罪事件に日々怯えていた。この現状を打開すべく、天才発明家のハカセとその助手キムラは対・痴漢用の装置を作り出すことに成功した。


「完成したぞ!キムラくん!対痴漢用警報装置!その名も『チカン・ジャッジマン』じゃ!」

「やりましたね!ハカセ!……で、これはどうやって使うんですか?」


 キムラはハカセの差し出した小さな長方形の機械を見た。無機質な銀色のその装置には『ON・OFF』と大きく書かれたスイッチが中央に配置されており、非常にシンプルな作りとなっている。


「それは今から実演して見せよう。ほら、その機械のスイッチをONにしてポケットにでも入れるのじゃ」

「え~……。実演っスか?男同士でなんか嫌だなあ」

「我慢せい!か弱い女性のためじゃぞ!」


 ハカセの気迫に押され、キムラは渋々承諾した。そして、チカン・ジャッジマンのスイッチをONにすると、それを白衣のポケットに入れる。


「これでいいんスか?」

「問題ないわい。じゃあ、ワシが痴漢役としてキムラくんを触るぞ?」

「はぁ~……」

「コラ!女性達が困っているのになんだね!キミのその態度は!」

「す、すいません」


 ハカセはキムラを一喝すると、彼の臀部を力強く鷲掴みにした。そしてそのままそれを揉みしだく。その瞬間けたたましいアラームが研究室内に響き渡った。


『ビーー!ビーー!ビーー!』

「よし!成功じゃ!」

「うわわ!うるさいっスね。これ、どういう仕組みなんスか?」


 キムラはチカン・ジャッジマンのスイッチをOFFにしながらハカセに尋ねる。すると彼は自慢げに答えた。


「ふふふ……。では教えてやろう。実はその機械、所有者の体に超微弱な電気の膜を張るのじゃ。もちろん人体に害は無い。そしてそれに触れると警報が鳴る、という仕組みになっておる」

「でもそれじゃ、人にぶつかる度に鳴っちゃいません?」

「大丈夫。ちゃんと冤罪対策も考えとるわい。人間の行動は脳から発せられる電気信号によって決定されとるじゃろ?だからチカン・ジャッジマンはその電気信号を読み取り、その中から所有者に対する激しい性欲や劣情を感じた時だけ作動するようになっとる」

「なるほど!触った相手にを感じてたら鳴るんスね?なら冤罪もあり得ないっス!……ん?」


 一筋の汗がキムラのほほを伝う。そんな彼を尻目に、ハカセは新たな機械を取り出していた。


「ところでキムラ君。次は女性が夜道で襲われた際に役に立つ発明を考案したんじゃが……」

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