第1話「木でした。」

 死んだ。きっとこれは死んだ。


 乾いた破裂音。

 大都市。

 人通りの多い道で安心しきった俺。

 今全世界で大流行のテロリストだ。


 狂った表情の犯人といつまで続くのかわからない痛みと死への恐怖。

 痛み・悲しみ・憤り・後悔。

 瞬時に頭を駆け巡る色々な情報。それが、おれの、のうないで、いっぱいの……。


 ということで、俺、死んだのだった。

 でも今現在、意識はある。

 周りを見回すと真っ黒な空間である。

 生前の俺は平凡なサラリーマンであった。

 次の取引先へと向かう途中、テロに遭遇して死んでしまった。

 そんなただの真面目な一般人。きっと将来性もあった青年。そんな人間であった。……ちょっと趣味が2次元。いやさ! 嫁は3次元がいい!(おい、そこの『2次元・3次元って言ってる時点でお察しだよ!』って言ってるやつ! ……ご同輩か?)


 コホン。話を戻そう。


 俺は冷静になって現状を整理し、そして察した。

 これは……、最近の流行りの!?

 いや、長年この業界で流行っている『転生』というやつではないだろうか。


(やったぜ! 平成の転生系は『チートでニート!』が保証されてるからな。え?昭和?いうな。『努力・根性・友情』の苦労メインの3段論法を押し付けてくるハードモードじゃん。それは、いやだっ。苦労するのはもう嫌。せっかく転生したら中世ヨーロッパの中で、うはうはと生きていきたい!! ……まって、リアルヨーロッパは簡便な。あくまで『風』な。約束だぞ『ヨーロッパ風』の豊かな綺麗な世界で『チートDeニート!』な転生をよろしく! 神様!!)


 ふぅ、嬉しさではしゃいじまったぜ。

 落ち着いてもう少し現状を精査しよう。


 現在俺がいるのは暗闇の空間。

 転生……だとすると、ここは母親の腹の中と見た!

 生まれる前から意識がありか!

 前世の記憶が生まれる前から標準装備とは……?これは知識ニートってやつだな!

 ……おっと、違った知識チートだぜ!w

 自分言っててなんだが違和感なさ過ぎ、ビックリだ……。

 なんにしても『幼少時代に生死をさまよって~』系の前世記憶取得じゃなくてよかった。

 苦しいのはごめんだからな!


 さぁ、そうと分かれば早く出産してくだされママン!

 そして俺に希望の光を!

 我が手に栄光を!

 昭和モードだけは回避を!

 綺麗な幼馴染とウハウハライフを!

 さよならモテなかった俺!

 こんにちはハーレムな俺!


 そんな浮かれた気持ちを抱きながら俺は……。

 長い暗闇を経て……。

 光差す世界へ生まれ出た。

 ……木として。

 

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