終わった想い

 短い恋だった。あれほど想っていたのに、今はすっかり冷めている。

 あの人が悪いんじゃない。分かっている。彼はそのままでよかったんだ。ついていけないと思ってのは私の事情。このままじゃ耐えられないと、もうついていけないと諦めただけ。

 この好意を失ってしまうのが惜しいと思った。それが一つの未練であり、救いだ。

 惜しい、切ない、寂しいと。繰り返し心の中でつぶやいてきた思い。今はすっかり洗い流されている。ただ曖昧な空虚感だけが胸を漂う。少し、大切なものがこぼれ落ちてしまったかのような感覚だ。

 これでよかったのかと思う。それは諦めていい感情だったのかと。

 私はまだ彼を想っている。ふっと息を吐けば消えてしまうような感情だけど、それでもまだ胸の底に留まっている。

 あの人への好意はきっと儚いものだ。移ろい、消えていくだけのもの。でも、その感覚が愛おしい。あの人を想えたその瞬間こそが尊いものだと、今の私は理解している。

 夢を見させてくれてありがとう。大切な時間を与えてくれてありがとう。もっと一緒にいたかった。同じ時間を共有したかった。

 遠ざかってしまった記憶。私の心はそこにいる。まだそこに。懐かしさと切なさがこみ上げる。ただ、それでしかない。

 もう終わった。どんな過去でも栄光でも、終わってしまったら、置いていかれるだけ。押し流されてしまう。

 寂しさは遠く離れていく。それでもほんの少し残った感情に浸っていたい。その感傷に身を預けて、遠くを見つめていたい。日が昇り、明けていく空を見守るように。

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