バニラのアイスが好き
スティックタイプのアイスを片手に、通学路を通る私。
半袖のブラウスを着て、膝丈のプリーツスカートをはいている。
補習帰り。真昼の太陽はまぶしくて、こんがりと焼けてしまいそうな気配がする。
アイスはみるみる内に溶けていく。放っておくとなくなってしまうから、急いでパクパクと食べる。
噛み付くように食らいつく。白い固まりは舌の上で溶けて、まろやかな後味のみを残す。
選んだのはバニラアイス。ミルクの味がまろやかなシンプルな味わい。甘いのに後味がさっぱりで気に入っている。
だけど、特別、好きなわけではない。いいや、嫌いといえば語弊があるが、これはある事情があるのだ。
私は見ていた。
部活帰りのあの人が、毎日のようにアイスを食べているのを。
スポーツをやっていた。肌をこんがりと焼いて、生き生きと、楽しんでいる姿を。
それを見て、いいなと感じた。
活躍をする姿を見てだんだんと惹かれていくのを実感した。
だけど自分では近づけなくて。
少しでも彼に近づくために私はノーマルのアイスを買っている。
その日はまっすぐに家に帰った。
空は夕焼け色に染まり、日が沈み切り、紺へと移り変わる。
夜になり、日が昇る。
一日の始まり。
今日も私はアイスを買いに、コンビニに行く。
冷凍ケースを開いて、中へ手を伸ばす。
ふと触れるもの。
手と手が重なり、温かなハーモニーを醸し出す。
顔を上げて、はっとなる。
そこには彼がいた。
中には目当てのアイスが一つだけ。
二人で一つのものを取り合う気はないが、はてさて、どうするか。
私はそっと微笑みながら、彼を見上げた。
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