金持ちと貧民

 学校の屋上で二人の男女が食事をしていた。


「お前って哀れだよな?」


 お坊ちゃまが言う。


「どうして?」


 少女は尋ねる。

 くすんだ暗髪の素朴な顔をした女子中学生だった。


「そんなものを美味しいと思ってるとかさ」


 彼が相手の持つパンに目が行く。

 そういう少年はどうなのか。

 相手はなにも食べていない。


「あなたはどうして?」

「いらねぇよ、あんなもの」


 胸を張って答える。


「あなたのほうが可哀想だと思う」


 彼女が口にすると、相手は顔をしかめた。


「私はいいわ。安物だろうとなんだろうと、味わえる。それで満足ができる。その時点ですごく得をしているんだもの」


 淡々と告げると、パンを咀嚼。

 食べきって、包装だけを掴み、立ち上がる。

 彼女は屋上を後にした。

 その姿を、少年は一人、見届けた。

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