弁当
他人の弁当が羨ましかった。
プチトマトの赤にブロッコリーの緑、卵焼きの黄と、色とりどり。
対して私は何なのか。肉とおにぎりばっかり。ほかにも食材を入れたかもしれないけれど、くわしくは忘れた。
私は弁当を作るのが下手だった。食材の詰め込み具合が足りず、「少ない」と同情されて、他人のおかずを分けてもらう始末。
そんなに少ないのだろうか。
内心、惨めな思いを抱えていた。
工夫はした。
色とりどりになるように、具材を詰め込んだつもりだ。
だけど、冷蔵庫にはろくなものが入っていない。
よくレシピで、「冷蔵庫にあるものだけで出来る」と宣っているけれど、そこにある食材は何一つ、私の家庭には存在しないものだった。
小麦粉も片栗粉も、なにもかも。かろうじてあるのは醤油か砂糖・サラダ油くらい。
第一、普通に食事をするときは使わないし。
せいぜい、お菓子作りに勤しむときにわざわざ買ってくるくらいだ。
おかげで弁当を作る際はわざわざ購入してこなければならない始末。
正直な話、うんざりしている。弁当なんて、ただ米を詰め込めばいいだけじゃないかって。
誰かと違う弁当。誰かよりもおかしな中身。通常ではかからないお金を無駄に支払う羽目になる。
弁当なんて誰が得をするのだろう。
いや、昼食に困るのは私だから、作らなければならないのだけど。いや、それにしたって、菓子パンを持ってこれば済む話じゃないか。
それを弁当持参とは。ああ、面倒臭い。
とにかく私は弁当が嫌いだった。
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