恋をして、私の景色は灰色になった。


 いままで好感を抱いていた人を、唐突に憎らしく思った。彼よりも優れているというだけで。

 今いる世界に対する感心すら消え失せた。


 どこかの誰かが賞を取っても、あなたでなければ意味がない。

 この世界のどこかで人が死んでも、あなた以外なら構いやしない。

 なにもかもがどうでもいい。あなただけが好きだった。


 私は確かに愛を知ったのに、彼を想えば想うほど、自分の心が冷たくなっていく。

 本当にこれでよかったのか。

 愛を知って、よかったのか。


 愛さえ知らなければ、他人を憎むという感情すら、持たなかったはずなのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る