☆初恋
初恋の相手は誰だっただろう。
真っ先に思い浮かんだのはコウスケだった。
彼は小学校のときから輝きを放っていた記憶がある。身体能力が早く、学年で一位というほど足が速い。勉強もできて、リーダーをやれるだけの能力を持っている。その上、顔立ちもよかったものだから、女子に人気が出るのも当然だ。
だけど、私は別に特別な感情を抱いていたわけではない。
休み時間、アンケートを取るような感じで「誰が好きなの?」と聞かれて、仕方がなく彼の名前を出しただけ。
本当は好きな人なんていなかったけれど、答えなければ「自分だけ隠しているのは卑怯」だと思われて、嫌われる。
だから嘘でも人気がありそうな人をチョイスして、答えた振りをしただけ。
私はコウスケとはただの知り合いだった。近所に済んでいて、小学生のころに登下校をした経験がある程度だ。
中学校に上がってからも、同じように「誰が好きなの?」と聞かれる。私は「コウスケ」だと答えて置いた。
ブレない私を見て、「一途だね」と言われる。
そうでもない。単に面倒だっただけだ。
彼がほかの誰かと結ばれたって、悲しむ要素なんてない。
ただ今ごろになって気になったのだ。
私の、本当の気持ちはどうだったのか、と。
好きと答えたから、とりあえず恋をしておいた。彼の活躍を間近で見て、かっこいいという感情を抱く。バレンタインにチョコを渡すなら彼になると、内心思った。
けれども、学生時代、誰にも本命をあげたことはない。
私は彼を、どう思っていたのだろうか。
強いていうなら、私は彼の内面を知らない。
性格・好み――
忘れたわけではない。ただ知る機会がなかった。
淡い想いは淡いままで終わっていく。
彼への想いは完全な恋にはなりきれなかった。
それこそが私にとっての唯一の心残りだったのかもしれない。
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