私に翼があったなら

第16話 私に翼があったなら-1

 耳にイヤホンを差し入れたまま、蘭花はリビングのソファに寝ころんでいた。

 学校から帰宅して、蘭花はすぐにシャワーを浴びた。初夏とはいえ、ずぶぬれで電車に乗るわけにもいかなかったのでジャージに着替えなおしたが、寄り道は取りやめになってしまった。楽しみは潰されてしまったし、冷えた体にシャワーを浴びて部屋着に着替え終わるころには、すっかり疲れ切っていた。

 何とか気力を取り戻そうと、コノカの歌を聞きながら一息入れようとしたが、ソファに転がった途端力尽きてしまう。再生ボタンを押さないままただ耳栓をしただけの状態になってしまい、ただ指を動かせばいいだけなのに、気持ちのほうが動かなかった。

(渚先輩も、歌声も好き)

 嫌がらせに巻き込まれて引いてしまったわけではない。むしろ尊敬の念が強くなったくらいだ。美しい歌は一曲たりとも音楽プレイヤーから消す気などないし、応援したい。

(美弦ちゃんも)

 そして美弦も自分の中の問題と向き合ったようだった。

 懸命に戦う人のことを蘭花だって後押ししたいけれど、一度に色々なことが起きたために頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 意味もなく指先でパールピンク色のプレイヤーを撫でる。

 火連にもコノカの曲を半ば無理やり薦めたけど、思いのほか気に入ったようで、何曲かを自分のプレイヤーにダウンロードしたと言っていた。

 火連のプレイヤーは綺麗な青い色で、彼が幼い頃にかけていた眼鏡と同じような色をしていたので、なんだか懐かしい気持ちになってしまった。

「寝てるの?蘭花」

 頭上から降ってきた声に、蘭花は体を持ち上げる。真子が背もたれの後ろから、ソファに転がる蘭花を覗き込んでいた。

「ママ、帰ってたの?」

「今ね。なに、聞こえなかったの」

「イヤホンしてたから」

 音楽は流していなかったけれど、押し込んだイヤホンは耳栓になって音を遮断していたようだ。眠るように目を閉じていたらうとうとしてしまって、真子の帰宅に気づかなかった。

「何聴いてるの?」

「コノカさんの曲だよ。真木野の先輩だったの」

「ああ、そう。そうだったかしら。歌、凄いわよねえ」

「うん、素敵だよ。ママも聴く?」

 笑顔でイヤホンを差し出すと、真子はそれを手に取らず、わずかに首を傾けた。

「なにかあった?」

 何気ない聞き方だったけれど、ごく普通のトーンだったけれど。母の声だというだけで、幼い頃に戻ったような気分になる。

「どうして?」

「疲れてるみたいだから」

「うーん、ちょっと。学校でね」

 蘭花は学校でのことを真子に話した。

 木乃香が受けた嫌がらせのことを説明しながら、使い魔の授業で失敗したこととか、自分のことも話した。

 その中で、例の先輩から因縁をつけられたことも言ってしまった。因縁の原因が真子にあることは言わなかったが、もしかしたら感づいたかもしれない。自分の中でだけ受け止めておこうと思っていたけれど、母の前ですっかり心がほどけてしまったみたいだ。

「みんな戦ってるなあって」

 蘭花は天井を仰ぐ。

「色々なことがあるの、本当に。嫌な人もいるし、自分が情けなくなることもあったし。頑張るしかないんだけどね」

 成功者にぶつけられる悪意、人の心をわかってあげられないもどかしさ、未熟な自分自身。

 妙に心細くて、もやもやとする胸を守るように膝を抱える。

「大変よね」

 人生の先輩でもあり、多くの辛苦を味わってきたであろう真子にしてみれば、切実さとはかけ離れているだろう。若輩者について回る、ありふれた悩みなのかもしれないが、それでもその渦中でもがくのはしんどいこともある。

「でもきっと大丈夫よ。蘭花は強いから」

「強い?私が?」

 思いがけない言葉に、蘭花は真子をじっと見つめる。

「だって蘭花、ママにだって負けなかったじゃない」

「それは……そう、かな?」

 高校受験の頃を思い出す。確かに蘭花は母に反対されても、最後まで自分の進路を曲げなかった。

「そうよ。あなたは結構頑固で、言うことは言っちゃう子ですからね。ママだっててこずるわ」

「でもそれって、ママもじゃない?」

 二人思わず顔を見合わせる。

「似たもの親子ね」

 思わず笑って、二人並んでソファに沈んだ。

「うん。私、頑張る」

 真子の肩にもたれる。傍らで真子が、蘭花の音楽プレイヤーに手を伸ばした。

 とろとろとした眠気に襲われて目を伏せると、まるで子守歌のような、母の歌声が聞こえた。


 数日後、蘭花たちは嫌がらせの犯人のことを知った。

 実際のところ、翌日には犯人は割り出されていて、それを木乃香から聞かされたのが数日たってのことだった。

 放課後の誰もいなくなった教室で、4人は一連の事件を振り返る。

「まあ、別に犯人捜ししてなかったから特に誰を疑ってたわけでもないけど、これ以上ないくらい犯人だって人だったね」

 美弦が息をついた。傍らの夏樹が苦笑いを浮かべる。

「女子の執念って怖い」

「結局、救いようのない人だったってことじゃないの。あれ一回で懲りてないとか、やられた方はたまったもんじゃない」

 眼鏡の奥の目を細めて火連があきれた風に言う。

 直接嫌がらせを受けたのは木乃香だと思っていた。けれど、蘭花たちも当事者であったことは、後から知ったことだ。

「そもそも、最初に蘭花が因縁つけられたことだって、謝ってもらってないのに。何だって水までぶっかけられなきゃなんないんだよ」

 水の魔法で嫌がらせを仕掛けてきた犯人は、実技の授業の後に蘭花に因縁をつけてきた三澤先輩だった。

「渚先輩、私を助けたせいで余計な恨み買っちゃって、どうしよう」

「蘭花のせいじゃないだろ」

「あれ、途中から草壁ちゃんじゃなくてのコノカの喧嘩にすり替わってたじゃん。それにコノカが思いっきり焚きつけたにしても、嫌がらせなんてのは仕掛けたほうが絶対に悪いね」

「そうだよ。大体、蘭花が言ったことにしても渚先輩の言ったことにしても、ほとんど正論だったじゃない。それを受け止めきれなくて、暴力に訴えたほうが圧倒的に悪いに決まってる」

 厳しい目つきでそう言った美弦が、ふと目線を落とす。

「……まあ、私は偉そうなこといえないけどさ」

 呟くような言葉に、蘭花は首を傾ける。

「私も渚先輩のこと、少なからず敵視してたし」

 美弦はためらうように、言葉を濁らせる。

 美弦と木乃香の間に何かあったのだろうということは、先日の一件でこの場にいる全員が何となく気が付いていた。

 みんなの前でそれを匂わせる会話を木乃香とした以上、話さなくてはいけないと思っているのかもしれない。

「別に言いたくないなら言うことないんじゃね、西園ちゃん」

 夏樹が軽い調子で言った。

「嫌がらせ事件とは何の関係もない話なんだろ」

「まあ、この前の件とは全然関係ないけどさ」

 思い悩むように美弦は目を伏せた。

 蘭花とて、美弦と木乃香の間に何があったか気にならないかと言えば嘘になる。だからと言って、つらいものを無理に打ち明けてもらうのも心苦しい。

「オリエンテーリングの時、なんか感傷的になっちゃったのもだいぶ恥ずかしかったしなあ。でもさ、恥ずかしいんだけど、嫌なんだけど、なんか、話したくなっちゃう時ってあるじゃない」

「それは、なんとなくわかるよ」

 胸にある迷いや葛藤を吐き出したくなる、そういう時はきっと誰にでもある。

 どちらかと言えばいつもはっきりとしている美弦が戸惑う姿を、蘭花は以前にも見た。

 あやふやにふるまっていた、オリエンテーリングの時。

「……私さ、中学までモデルやってたのね」

 いつもより小さな声で、美弦は語り始めた。

「小さいころから魔法で変身して遊んでてさ。もちろん、外でやると怒られるから、練習も兼ねて家の中でやるんだけど、何に変身するかっていうと、大体テレビに出てる芸能人とか、アイドルでさ。それで真似して歌ってみたり、お芝居してみたり。ごっこ遊びの延長みたいなものなんだけど、テレビとかメディアの中の人たちに変身して真似ばっかしてたから、そのうち、私も人前に立って表現するような人間になりたいって思って」

 そうしてテレビや雑誌の中の人たちに憧れるうちに、モデルの仕事に行きついたという。

「でも、全然だめだったの。そりゃあそんな簡単になれるものだなんて思ってなかったけど、でも、本当に、全然なれなくて。雑誌モデルを目指して書類送ったり、オーディション受けてみたり、専用サイトに登録したりもしたよ。だけど、いけて一次選考程度で、雑誌デビューなんてとてもじゃないけど、できなかった」

 美弦の整った顔を見つめる。

 綺麗な形の目鼻に唇。けれど一つ一つが整っている分、かえって目立つところもなかった。悪目立ちする部分もなければ、目を引くほど強烈な個性もないと言えるかもしれない。

「それで、私の容姿じゃモデルなんて無理なんじゃないかって思って、どんなに見た目や美容に気を使っても、応募写真を工夫しても、元がこんなんじゃ駄目なんじゃないかって、そう考え始めたら、自分を信じられなくなっちゃって、それで、私」

 美弦は少し息をつくようにして言葉を切り、言った。

「変身した姿でモデルを目指したの」

 その一言は、静かな教室に妙にくっきりと響いた。

「人気モデルとか、芸能人とか、いっぱい研究して。可愛くて綺麗な人達のいいところどりしまくって、理想の女の子を作り出して、変身した」

 オリエンテーリングの後、美弦が披露した美少女姿を思い出す。

 嘘みたいな、理想の女の子の姿。

「そしたら、すぐに結果が出たよ。一番初めに応募して駄目だった、大好きだった雑誌に応募しなおしたら、合格したの」

 美弦が口にした雑誌名は、雑誌の類は購読していない蘭花でも名前を知っている人気誌だった。ローティーン向けのファッション誌で、一部のモデルたちは同年代の少女たちに高い人気を誇っている。

「それで、お仕事もらえるようになったんだけど。モデルって、容姿だけじゃなくて、センス磨いたりとか、ポージングとか、ものすごく努力が必要で。見た目は何とかなっても、熱烈なファンがつくほどの人気モデルには結局、全然かなわなかった」

 きっと厳しい世界なのだろう。あの輝かしい世界を目指す者たちは、吐いて捨てるほどいる。

「でも、最初はすごく楽しかったし、嬉しかったの。変身していたけれど、モデルに憧れたのは変身遊びの延長だったし、憧れのお仕事ができるの、やっぱり楽しかったよ」

 美弦は寂しそうに笑った。

「でも、だんだんつらくなってきちゃって。どんなに可愛い、綺麗って褒められても、それは『本物の自分』じゃなくて『偽物の誰か』。周りをだましてることが後ろめたかったし、何より、本当の私を見てもらえないから、満たされなくなっていって」

 それはきっと苦しいことだ。誰にも見てもらえなくて構わないなんて言えるほど強い人は、そう多くない。

「2年くらいやったころ、中3のはじめくらいね。雑誌の企画でコノカの特集を組んだの。それで、コノカのグラビア撮影の日になったんだけど、彼女、仕事続きで体調が悪そうだったの。プロ意識強いから人だからそんな顔見せないようにしてたけど、合間合間であんまりしんどそうにしてたから、だから私、言ったんだ」

 美弦は手を握りしめて言った。

「私、コノカに変身できますよって」

 話が木乃香に繋がった。

 蘭花は固唾を飲んで話の続きを待つ。

「私、コノカの目の前で変身してみせたの。そうしたら、最初は驚いていたけど、だんだん、冷静になって。言われたの」

 一度、唇をかみしめてから、再び美弦は口を開く。

「あなたの本当の姿は?って」

 その言葉に、蘭花までどきりとする。

 木乃香の強い眼差しで見つめられたら、どんな姿に変身していても見破られてしまいそうだ。

「モデルの時は変身しているの?していないの?って聞かれて。周りには変身できるって黙っていたから、隠し通そうかと思ったんだけど。でも、コノカには見せてしまったし、そうだね、誰かに、話したくなってしまったのかもしれない」

 そして木乃香に、モデル時は変身していることを話し、本当の自分の姿も見せたのだという。

「そしたら言われたの。『あなたは空っぽね』って」

「そんな」

 蘭花は思わずつぶやいた。

 自尊心を大事にする木乃香のことだ、自分を偽るようにモデルの仕事をする美弦の存在が理解できなかったのだろう。それでも美弦の苦しみを知ってしまえば、あんまりだと思わずにはいられなかった。

「空っぽって、図星だったから、すごく悔しかった。認めたくなくて、何とか自分の気持ちをごまかして続けてたけど、ほんとは、なんとなくわかってたの。自分じゃない誰かに変身してモデルの仕事したって、空しいだけだって」

「それでモデルのお仕事、やめちゃったんだ」

 蘭花の問いかけに、美弦は少しだけ泣きそうな顔で笑った。

「蘭花にはほんと悪いことしたね。八つ当たりして」

「やつあたり?」

「オリエンテーリングの時、男子に変身してからかったじゃない。あれ、八つ当たり以外の何物でもないんだ」

 確かにずいぶんと意地悪をされた気がする。その原因ははっきりとはわからなかったけれど。

「私は自分を偽り続けてたから、蘭花が熊谷の前で素直にふるまってるの見てたら、否定してやりたくなった。私だけじゃない、どうせ誰だって自分を偽ってるに決まってるんだって」

「私が火連くんの前で猫かぶってるとか、かわい子ぶってるように見えたってこと?」

「逆だよ。そんな風に見えなかったから否定して、ひっかきまわしたくなったの。かっこいい男子に変身した私の外見に蘭花が騙されてでもしたらさ」

「騙されでもしたら、なんだよ。面白いのか」

 火連の厳しい声。冷たさよりも苛立ちが滲む。

「……やっぱり人は、外見しか見てないんだって思えるから。私が偽物であっても、本当の私を無視する人たちが悪いんだって、そう思えるから」

 本当の姿を見せたこともないくせにね、と美弦がどこか寂しそうに呟いた。

 なんだかひどく、やりきれなかった。

「ほんとに八つ当たりっていうか、性格悪いな」

「はいはい、熊谷はちょっと落ち着こう」

 火連をなだめる夏樹を横目に、美弦は話を続ける。

「反省してるってば。因縁つけてきた先輩と同じだよ。自分にはないものを持つ人を羨んで、勝手に腹を立てて、人を攻撃しようとしたの。わざわざ仲良く平和にやってる人たちの間に波風まで立ててやろうとしてさ」

 顔を手で覆うようにして、美弦はうつむいた。

「ほんと、最低」

 そのまま顔を上げずに美弦は言った。

「私、魔法学校に入ったのは、昔の自分と決別したかったからなの。馬鹿なことに魔法を使ったって自覚があるから、これからはまともなことに、もっと役に立つ魔法を使いたいって思って入学したの。でも、真木野にコノカがいるって知らなくて。入学式でコノカを見た途端、嫌な感情ばっかり出てきちゃって」

 顔を伏せる美弦に、蘭花はかける言葉を見つけられないでいる。

「結局また馬鹿なことに、蘭花をからかうために魔法使っちゃった。何なの私、ほんと馬鹿なの?」

 嫌がらせの一件で、美弦は自分の問題と向き合った。けれど、それでも乗り越えられたわけではないのだ。

 こうして自分をさらけ出せば、あふれ出したものに自分をつぶされそうになっている。

「まあ、草壁ちゃんをからかったあたりは、ほんと馬鹿だわな」

 夏樹にしては辛辣な言葉を口にした。美弦が顔を上げる。

「まあでも、反省したんだろ?入学して早々、一度踏み外したけど、とにかくこれからも一生懸命に魔法を勉強していくしかないってだけの話だろ。それに今、二人は仲良くやってるんだし」

「そんなあっさりまとめられても……」

「俺はね、オリエンテーリングの後、草壁ちゃんと西園ちゃんは絶対に仲良くなれないと思ったの。でも、二人は友達になっただろ。それだけ西園ちゃんは前に進んでるってことなんじゃないの」

「ほんとだよ。あれで仲良くなれるのがわけわからん」

 どこかふてくされたように火連が言う。

「って言っても、私と美弦ちゃん、まだ友達になったばっかりだし」

 蘭花の言葉に、一同が眉根を寄せる。

「まだ仲良くなろうとしてる真っ最中というか。だからわだかまりはあるかもしれないけど、それでもなんとなくだけど一緒にいて、仲良くなっていった……」

 そこまで言って、蘭花はぎこちなく美弦の顔を見た。

「……つもりなんだけど、違うかな?」

「……違わない」

 受け取り方を違えば、『別に思ってるほど仲良しな友達ではない』ととられかねないことを言ったが、納得したように美弦は頷いた。

「その通りだよ。私だって、あんな性格悪いことしといて仲良くなれるなんて、そんな虫のいいこと思ってなかったよ。それでも蘭花はそばに来てくれて、気づいたら仲良くなってたんだもん。それで正解。私は、それで十分」

 夏樹の言葉を借りるなら、二人は前に進んでいる、その最中なのだ。

「お互いのこと、まだ知らないことばっかりだよ。だから、言いにくいこと話してくれてありがとうね、美弦ちゃん」

「ううん、聞いてくれてありがとう」

 ようやく肩の力を抜いたように、美弦は少し笑った。

「まあ、二人がそれでいいならいいけどさ」

「俺だって熊谷のこと、全部なんて知らんもんなー」

「全部知られてたら怖いわ」

 軽口をたたきあう火連と夏樹を眺めながら、それでも自分は火連のことをたくさん知っていたいと思う。

 わかったようなことを言いながら、自分もやっぱり欲深い。

「うー……」

 唸りながら、美弦がしゃがみ込んだ。抱え込んだ膝に頭を落とす。

「すっごい恥ずかしい。昔の事とか話すもんじゃないよね、もー。恥ずかしいー」

「大丈夫、大丈夫。みんな恥の一つや二つ抱えて生きてるもんよ」

 夏樹の言葉に美弦が顔を上げた。

「日向って悩みなさそう」

 拗ねた幼い子どものように美弦が言う。

「あるよ、それなりに」

 その割に明るい口調で夏樹は答えた。

 彼の言葉はさりげなく人の心を軽くするけれど、自身の悩みを解きほぐすだけの柔軟さも持っているのだろうか。

「つーか、失礼なこと言ってんなよ。悩みぐらい誰だってあるだろ」

 むしろ火連の方が不満も露に美弦に切り返した。美弦も一瞬眉をひそめたが、「そりゃ悪かったね」とそっけなく言って納める。

 何か、悩みがあるの?

 そう火連に問いたかったけれど、今はそれが声にならなかった。

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