謎の少女

勝利だギューちゃん

第1話 遭難

僕は、方向音痴だ。

それも、天然記念物な方向音痴だ。


知らない土地はもちろん、近所でもよく迷子になる。

スマホの地図も、猫に小判。

全く役に立たない。


でも、街の中はまだいい。


山奥にひとりで、放り込まれたら、

はっきり言わなくても、死ぬ。


そう、はっきり言わなくても・・・


わかっていながらも、過ちをおかしてしまう。


僕は、山の中で迷子になった。

遭難した。


食べ物も飲み物も、底をついた。

アウトだ・・・

ここが、死に場所か?

僕が発見されたら、新聞に載るのか?

せめて幸せな、家庭を築きたかった。


(大丈夫ですか?)


若い女の子の声がした。

お迎えか・・・

僕のお迎えは、若い女の子だったのか・・・


良かった・・・

さよなら、現世・・・


眼が開いた。

何だろう?

ここが、あの世?

イメージと違うな・・・


「気付かれました?」

振り向くと、女の子がいた。

「あなたは?」

「大変でしたよ。あなたを運ぶのは・・・」

辺りを見回す。


良くある小屋のようだが・・・


「あなたが、助けてくれたんですか?」

「ええ」

「あなたは、神様ですか?天使ですか?」

女の子は、キョトンとしている。


「まだ、意識がもうろうとしているようですね」

「・・・ええ・・・」

「私は、人間の女の子ですよ。富口康雄(とみぐち やすお)くん」

「どうして、僕の名前を?」

「失礼ですが、鞄の中をのぞかせてもらいました」

「どうしてですか?」

確かに失礼だ。


「ある事を確かめるためにです」

「ある事?」

女の子は頷く。


「あなたは、自殺ではないみたいですね。単に遭難しただけみたいです」

「そうなんです」

「親父ギャグですね」

「偶然です」

女の子は、笑った。

不思議だ。

この笑顔を見ていると、癒される。


「ところで、あなたのお名前は?・・・あっ、いきなり失礼ですね」

「いえ、いいんです。私もしましたし・・・そうですね、私の名前は・・・」

「名前は?」

「夏奈梨亜(かなりあ)と、いいます。梨亜と呼んでください」

「そういう鳥、いましたね、梨亜さん」

「気付かれました?でも、私は正真正銘の人間の女の子です」

えらく、強調するな・・・

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