第3話 友人と待ち合わせ、だが……
図書館には梨絵との約束通り、午後一時頃着いた。彼女はまだ来ていないようだ。来るまで読書をしていよう、と思い館内を見て回った。その中で俺は小説のコーナーを見付けたので自分の好きな作家を探して見た。お目当ての作家のところを見ていくとまだ読破していない小説があったので二冊引き抜き、カウンター前の木製のテーブルと椅子があるところに行った。そして、持って来た本をテーブルの上に置いて腰かけた。
ここの図書館は缶ジュースは駄目だけれど、ペットボトルなら飲んでも良いので途中コンビニで買ってきたコーラの栓を開けて一口飲んだ。
それにしても梨絵が来ない。どうしたのだろう。何かあったのだろうか。それならそれで、連絡をしてくると思うのだけれど。今まで、たまにここで待ち合わせをして僕の小説を読んでもらっているけれど、こういうケースは初めてだ。約束の時間より三十分くらい経過している。俺は心配になったのでメールを打った。
<約束の時間過ぎてるけど何かあったの?>
そう打ち込んで送信した。スマホをテーブルの上に置き、再び読書を始めた。
更に三十分後。メールが返ってきた。二件来ている。一件は貝沢梨絵、と表示されており、もう一件は原田耕平、と表示されていた。同時に来るなんて珍しい。俺はまず、梨絵の本文を見た。
<ごめんなさい、行けなくくなっちゃった。彼氏が車で事故って呼ばれたの>
あら、なんてことだ! 俺は返信した。
<彼氏、大丈夫なの? 今日は無理みたいだからもう少し読書してから帰るから。何か出来ることがあったら言ってね>
送信した。それ以降、メールは来なかった。気の毒に……。彼氏には会ったことはないけれど、梨絵の彼氏だから心配だ。最悪人をひいたりしていないで、単独事故ならまだいいけれど。後で、詳細を訊いてみよう。俺は気になると止まらない質。でも、何度もメールを送るのはしつこいだろうから、後で訊くにせよとりあえず諦めるためにスマホの電源を切った。
俺は心配で不安になったからか幻聴が聞こえてきた。
オマエノセイダ
ジコルナ
と、相変わらずマイナスな内容のものだった。確かに気分の良いものではないけれど、聞き流すしかないと思っている。これが出来るようになるまでしばらくかかった。それまでは現実の声と幻聴の区別がなかなか付かず周囲に当たり散らしたこともあった。主治医が言うには、完治の見込みはないが「寛解」はするという。どういう意味かわからずネットで調べてみると、症状が出なくなることらしい。本当に今の俺にそういう状態になれる日が来るのだろうか……。俺は、読書をする気がなくなったので帰宅することにした。
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