アイスクリーム

彼にアイスクリームを買ってもらった。

秋の昼間というのは、思ったほど暑くはない。

「次、どこ行こうか」

「じゃあ、公園にしようよ」

私がそう言うと、彼はうなずいた。

公園は、ここから少し歩いたところにある。

私が歩き出すと、彼が言った。

「歩きながら食べると、アイスクリームがこぼれて服が汚れちゃうよ」

「平気だもん。私、そんなことしないもん」

そう言うと、彼は私の手を引いて近くのベンチに座った。

「ダメ。ちゃんと座って食べないと」

「いいじゃん。私、早く公園行きたい」

アイスクリームを持ったまま、にらめっこする。

ふと、よく考えればこんなに彼の顔を見つめるのは初めて、ということに気づいた。

そして、彼も見つめているうちにだんだんと、顔が赤くなっていった。

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