高校生

桜並木を見る暇もなく、学校へ急いでいた。

やたらと重いカバンに、可能性なんてものを詰め込んで、身動きを取れなくしている。

そんな自分にため息をつきながら、同じ制服を着た学生と名所の坂道を登っていた。

体温の高そうな赤みがかった肌を隠しもしないで、元気よく挨拶するのを見ると、青春という二文字がちらつく。

すべてに冷め切ってしまったこの瞳が、腐ってしまいそうだ。

また、ため息をつく。

正門に直立する般若の先生に会釈をして、靴からシューズに履き替える。

そのまま職員室へ向かい、先日出しそびれたプリントを担任に渡した。

今日のやることは終わった。

あとは無事に見つかることなく授業をサボって帰るだけだ。

職員室を出て教室へ向かう途中、朝練終わりの運動部とすれ違った。

避けようとしたのだが、運動部から溢れ出る汗が、痩せ細ったカバンとぶつかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る