第225話 新四天王


 俺と配下の者達はダンジョン内で勇者達が逃走する姿をぼんやりと見ていた。



「何だったんですかね……」

「何だったんだろうな……」



 アイルの問いかけに同じような言葉で返してしまうほど呆れていた。



 モルガスが強すぎてユウキ達が弱く見える可能性もあるけれど、だからといってあっさりと負け帰るとは思ってもみなかった。



 この後、どうするつもりなんだろうな……。



 一応、そのままメダマンを彼らに付けさせるとして、もう一匹もモルガスに付けておいた方がいいだろうな。



 映像で見ると、煙幕が晴れた後、モルガスはそのまま俺達のいる魔王城方面に向かって歩き始めたようだし。



 戦いは予想外の結果に終わったが、収穫はあった。

 両者のスキルが判明したことだ。



 これを先に知っているのと、そうでないのでは大きな違いある。

 そのスキルに合わせた罠の配置や防衛を前もって準備出来るのだから。



 となれば、早速対策に取りかからないといけないな。



「よーし、今のうちに勇者向けの罠を用意しちゃおう」

「そうですね。私もお供いたします。ですが……」



 アイルは同意しつつも言葉を濁した。



「ん? どうしたの?」

「いえ……勿論、勇者対策が最優先なのは当然なのですが……序列決定戦の途中でしたので……」

「あ……」



 今、思い出した!

 そういえば、そんな事やってたね!



 一応、今の所、準決勝まで進んだはずだけど……当初の目的である皆の戦いっぷりを見るという点では、一回戦は終えているので全員分は見られたわけだ。(一部不戦勝もいるけど)



 そう考えると、これ以上やっても俺には然程メリットが無いんだよね。

 そもそも、この対決にオチを付けると色々因縁が残りそうだし、序列を付けたいわけでもない。

 配下内での空気が悪くなったりしたら嫌だもんな。



 という訳で、この辺で上手く鞘を収めたい所。



「その事で、いい事を思い付いちゃったんだよね」



 俺がそう言うと、アイルが興味を惹かれたようにこちらに目を向けてくる。



「いい事……ですか?」

「そう、序列を決めるのではなくて、新たな序列を作ったらどうかなーなんて」

「新たな序列……??」



 彼女だけでなく、この場にいた全員が首を傾げた。



「これまでの参謀と四天王はそのままで、新しい四天王を作るのさ」

「新しい……四天王……?」



 皆、「ちょっと意味分かんない!」みたいな顔をしている。



「これまでの四天王が魔軍四天王なら、今度は元勇者四天王を作ったらいいんじゃないかと思ってね」

「……」



 そんな発想は思ってもみなかったのか、皆、きょとんとしていた。



「そもそも魔族と勇者の力を同列に扱っては比べようがないと思うんだ。だから別にしたい」



 とか尤もらしいことを言ってみる。



「だから、元勇者であるラウラとリリア、そこに瞬足くんと回復さんを加えて、元勇者四天王を作りたいと思うんだけどどう?」



 皆、互いを見合う。



 すると、ラウラが目を輝かせて言う。



「おおっ! なんか格好良いのじゃ! 妾は気に入ったのじゃ! リリア殿はどう思うのじゃ?」

「えっ? 私ですか? そうですね……ふふっ、なんか闇落ちした四天王って格好良い響きですね! 私も気に入りました!」



 元勇者二人は賛成のようだ。

 他の魔族四天王とアイルはというと……。



 シャル「当人達が気に入ってるならいいんじゃない?」

 プゥルゥ「かっくいいー」

 キャスパー「私は魔王様のご提案に従うのみです」

 イリス「以下同文……」



 アイル「私も同意見です。レジニアの勇者も近付いてきていることですし、今はそちらを優勢する時でもありますし」



 瞬足くんと回復さんは……まあ、聞かなくても大丈夫か。

 パールゥとライトニングには、別に何か考えてあげようかな。



 俺は全員を見回した。



「じゃあ決まりだね。これからは新生四天王と現行四天王のダブル四天王体制で行くことにする!」



「「「「「「「承知しました」」」」」」」



 皆、揃って跪く。



 ここに、ある意味――魔王八天王が誕生した!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る