第106話 趣味なの?
ダメだ……息が続かない。
これは思いの外、難しいぞ。
取れそうなのに取れない、なんとも言えないもどかしさ。
はて、どうやって手に入れたらいいものやら……。
俺はパールゥの体内で浮かぶ魔法石を見ながら考える。
トントロの時みたいに、外に吐き出してもらうことは出来ないだろうか?
そもそも、それを先に考えるべきだった。
というか、今更な話だけど、パールゥは自分の体内にそんな石が漂っていることに自覚があるんだろうか?
聞いてみる必要がありそうだ。
「ねえ、パールゥ」
「……ぷぅ?」
彼女は、まだちょっと恥ずかしそうにしながらも返事をする。
「自分の体の中に石が浮いてるって気付いてる?」
「ぷぅぷぅ」
聞いてはみたものの、何を言っているか分からなかった!
するとそこで、側にいたプゥルゥが気を利かせて通訳してくれる。
「しらなかったって」
案外、異物感とか感じないらしい。
「俺、その石が欲しいんだけど、出してもらうことって出来るかな?」
「ぷぅぷぅぷー」
「やってみるって」
プゥルゥの通訳がかなり有能である。
彼女が一緒に来てくれてなかったら、意志の疎通が取れなかったであろうと考えると、ほんと良かった。
早速、パールゥは魔法石を吐き出す体勢になった。
体を大きく曲げて、力を込める。
「ぷぅぅぅぅぅっ……!!」
透明な体が真っ赤になり、ぷるぷると震える。
しかし……。
「ぷ……ふぅ……」
力尽きて、ぐったりとしてしまった。
魔法石は元の位置から全く動く様子がなかった。
ダメかあ……。
自分の意志ではどうにも排出出来ないらしい。
どうしたものか……。
対応策に困っていると、プゥルゥが何気ない感じで言ってくる。
「ボクならパールゥのナカにはいれるよ」
「えっ……? どういうこと?」
「ドウシツのカラダでできてるからカンタンにユウゴウできる。おなかのナカなんかスイスイっておよげちゃうよ」
「……」
そういうの出来るなら、もっと早く言ってよ!
「俺が一生懸命、泳ごうとしてたのは何だったんだ……」
「えっ、オトメのカラダのナカにもぐったり……そういうことするのがマオウさまのシュミかとおもったよ」
「んなわけあるかいっ!」
どんな趣味だよ……ったく。
でも……パールゥの中は案外、ぬるんっとしてて心地が良かったというか……息が続くならずっといてもよさそうな……って、何言ってんだ、俺は!
「と、ともかく……プゥルゥが石を取ってこれるっていうのなら、お願いするよ」
「おっけー」
プゥルゥは自分の体で丸を作ってみせた。
「じゃあ、パールゥ。ちょっとだけオジャマするね」
「ぷぅ」
言うとプゥルゥは跳ねながらパールゥのお腹に突撃した。
まるでプールにでも飛び込んだかのようにあっさりと中に入る。
そのままパールゥの体の中を観察すると、同色で視認しにくいが、確かにプゥルゥの小さな体が泳いでいるのが見える。
「おお……」
あの丸い体で随分と軽やかに泳ぐんだなー……。
プゥルゥは魔法石に辿り着くと、それを自分の体で掴むようにして取り込む。
反転して戻り、そのままパールゥの体から飛び出した。
「ふぅ……とってきたよ! はい、マオウさま」
「おう」
彼女は自分の体の中から魔法石を「ぺっ」と吐き出す。
パールゥと違って、自分で吐き出せるんだな。
そこは、体が小さいからか?
俺の足元に転がる青みがかった石はハンドボールくらいの大きさがあった。
こうして外に取り出してみると結構大きいな。
これは期待が持てそう。
ただ残る不安は、ここまでしてこれが魔蒼石じゃない可能性もあるってこと。
さて、どうなることやら……。
俺は早速、
魔蒼石×20
おおっ、やった!
ちゃんと魔蒼石だ。しかも、結構な数だぞ。
途端、俺の中にワクワクが広がる。
これでようやく作れるな。
アルティメット金ダライが。
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