第101話 魔碧石
リリアが差し出してきた手には、緑色に輝く石が載っていた。
「それが……魔碧石?」
俺は遠目で彼女の手を覗く。
すると、リリアの方から玉座の側まで寄ってきてくれた。
近くで見ると、その輝きに見覚えがある。
色こそ違えど、魔紅石や魔黄石もこんな輝きだった。
魔力を内在している力強い光ってやつ。
確かに魔碧石のようだ。
「なんでこれをリリアが持ってるんだ?」
「お守りみたいなもんです」
彼女は懐かしむように述べた。
「エルフは皆、村を出る際に、体の無事を祈る意味で渡されるんです」
へえ、そんな風習があるんだ。
エルフといえば風の民みたいな感じだし、魔碧石について何か知ってるかなーと思っていたら、ズバリそれそのものが出てきて驚いた。
「という訳で、はい」
そう言うと、彼女は俺に魔碧石を手渡してきた。
「ん……これは?」
「今の魔王様には、それが必要なんですよね?」
「まあ、そうだけど……これは大切なものなんじゃないのか?」
「エルフとしては……そうなのかもしれないですけど……。今の私はダークエルフですから」
「……」
「前の私は死んだんです。これからの私は魔王様の為に生きる。だから、これは魔王様に使ってもらいたいんです。それにここに置いてもらっているご恩もありますし」
なんだか少し気が引けてしまうな……。
でも、それが必要なことは間違い無い。
「そう……なら、使わせてもらうよ」
「はいっ」
リリアは嬉しそうに返事をした。
俺は手の中にある魔碧石を
すかさずコンソールを開いて、アイテムボックスを確認してみた。
すると、そこには――。
魔碧石×5
む、あの大きさで五個分か。
手の中に丁度収まるくらいの大きさだったから、そんなもんか。
魔紅石や魔黄石は巨大な塊だったから大量に所持してるけど、これはなんとも心許ない量。
本当に大事に使わないとな。
コンソールを閉じて、再びリリアに目を向けると、彼女はこちらを見つめながらニコニコしていた。
そんな彼女の頭上で何かが煌めいていた。
って……また★出てるぅぅっ!?
ほんと、出過ぎだろ……。
一応、どんな具合か見ておくか。
[ステータス]
レベル:9 ★:1105
うん、安定のちょっぴり上昇。
でも、これも塵も積もればなんとやらで結構馬鹿に出来ないぞ。
なんだかんだで、これまでの総計は結構な数になってるし。
と、★を確認したところで魔法石のことを考える。
残りは魔蒼石、ただ一つ。
すぐに探しに行きたいところだが、今日はもう遅い。
明日、プゥルゥと一緒に出かけよう。
俺は改めてアイル、キャスパー、シャル、イリス、プゥルゥ、そしてリリアの姿を見渡す。
「では、本日はこれで解散。皆、通常の任務に戻ってね」
そう告げると、皆いつものように「はーい」と元気な返事をして自分の部屋に戻って行った。
さて、俺も部屋に戻って一休みするか。
そう思って自室に移動しようとした時だ。
「あの……」
呼び止めの声はリリアだった。
「なんだ、まだいたのか」
「ええ、まあ……」
彼女は何だか言い難そうにしている。
「何か用?」
「えっと……置いてもらっている身で大変厚かましい限りなんですが……。私はどこに居ればいいでしょう?」
む……。
そういえば彼女の役割は決めたけど、普段の居場所というか、部屋を決めてなかった。
やっぱり罠補助係として出回る以外は、ダンジョンの階層内に配置して防御力を高めておいた方がいいだろうな。
「そうだな……プゥルゥの一つ上層、第五階層の広間が空いてる。そこをリリアの部屋として使ってもらっていいよ」
「え……私に部屋を下さるんですかっ!?」
「あ、ああ……」
彼女は思ってもみなかったようで、瞳をキラキラと輝かせていた。
「あ、そういえばリリアのことをもう少し聞いておきたいな」
「えっ」
まだ彼女のことで聞き切れていないこともあるし、ラデスについても、もう少し詳しく情報を仕入れておいた方がいいだろう。
「俺の部屋でちょっと話さない?」
「ま、まままっ、魔王様のお部屋で!?」
どういう訳だか、彼女の声が裏返る。
「え、ダメ?」
「い、いえっ! そんなことは!」
「じゃあ」
「は、はい……」
彼女はやや火照った顔で返事をした。
すると、その頭に――★が飛び出していた。
また出たぁぁっ!
すぐ、ステータス確認。
[ステータス]
レベル:9 ★:1125
平常運転だった。
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